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“未知の領域”への開発だったスタート

 FF11のサービスがスタートした当時、スクウェア(当時)は映画事業の失敗などで経営的に厳しく、さらにオンラインゲームに対して懐疑的な見方もありました。サービス開始当初、当時の責任者だった田中弘道プロデューサーに取材をしたとき、FF11に骨を埋める覚悟……という不退転の決意を語っていたことを思い出します。

 実際、MMORPGは当時「未知の領域」だけに、想定外続きでした。取材時に聞くと、特に開発者側が驚いたのは、プレーヤーたちがゲームに熱中するあまり、用意した多くのクエスト(課題)に対して想定をはるかに上回る速さでクリアしたことだったといいます。それを「スーパーコンピューター並み」と表現したように、プレーヤーたちが集まることで想像もできない力が発揮されたのです。

 

 そこでゲームのバランス調整が必要になりしたが、これまた一苦労です。難易度をアップしすぎ、プレーヤーから猛反発を受けることも多々ありました。それでも不満を受け止めて改良し、並行してコンテンツのボリュームを増やして、FF11は進化していきました。

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 プレーヤーたちも、普通にプレーしては勝てない強敵に対して互いにネットで情報を共有。時には開発者の予想を上回る新戦術を編み出し、乗り越えていきました。FF11には、お互いに助け合って「高い壁」を乗り越え、体験を共有する楽しさがあったのです。

 

 例えば、18人で徒党を組み、強敵に挑んで、貴重なアイテムをゲットするという楽しみもありました。私自身、敵のいるダンジョン深くに潜り込み、冒険に熱中するあまり、深夜の睡魔に勝てず“轟沈”。日差しで目が覚めることもありました。私の通算のプレー時間が「256日12時間……」という数字が示されたときは、苦笑するしかありませんでした。

 こうした開発陣とユーザーの応酬の結果、ゲームの完成度はどんどん高まり、50万人が熱中する強大なオンラインゲームへと成長していったのです。

 FF11は、FFシリーズらしい重厚なシナリオ、美麗なオープニングムービーにも伏線が張り巡らされていました。オンラインゲームながらパッケージに負けない、むしろ上回るような内容だったのです。

 人気ソフトが出れば似たゲームが出るのが世の常ですが、FF11を脅かすようなゲームは出ませんでした。おまけにFF11はいまだに現役です。その事実が、ライバルメーカーが対抗できないほど、コンテンツの質と量の両面で抜きん出ていたことの証拠だといえるのではないでしょうか。