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川口君を救出しなかった大学当局の責任は免れない

 大学構内の教室の中で起きた事件なのに、大学当局は、必要な措置をとらなかった。革マル派は普段から、反対派の学生や教授らへの暴力事件を頻繁に起こしていたのに、教室へ連れ込まれたまま戻らない学生を救出できなかった。

 言うまでもなく教室の施設管理権は、大学当局にある。様子を見に行った2人の教員は川口君の身の危険を十分に察知できたはずであり、施設管理権を行使し、警察に出動要請をしていれば、川口君の命を救うことはできたのだ。半世紀前の出来事であることは承知の上で、大学当局の責任は免れないと思う。

 その後、川口君がリンチを受け、絶命したのは、最初に連れ込まれた127番教室ではなく、隣の128番教室だったことが警察の実況見分でわかった。128番教室は革マル派が普段から自治会室として使用しており、そこから大量の血痕などが検出されたのだ。

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革マル派の声明文

 事件直後、革マル派全学連は、馬場素明委員長の記者会見と前後して、中央執行委員会の名でも緊急声明を出していた。その声明はすぐにチラシとして活字印刷され、学内で大量に撒かれた。

 声明文の冒頭は以下のようなものだった。

「11月8日、中核派学生・川口大三郎君の死去という事態が発生した。この事態は、彼のスパイ活動にたいするわれわれの自己批判要求の過程で生じたものであった。それゆえわが全学連は、この不幸かつ遺憾な事態にたいし、全労働者階級人民の前にわれわれの責任ある態度を明らかにすることが階級的義務であると考える。

 

 11月8日、全学連は、政府支配階級が強行した相模補給廠(神奈川県相模原市にある在日アメリカ陸軍の補給施設=筆者)からの戦車搬出にたいして断固たる緊急阻止行動を展開するために、早稲田大学に結集し総決起集会を実現した。ところがこの過程で、われわれは、早大構内における中核派学生・川口大三郎君のスパイ活動を摘発した。『革マル殲滅』を呼号しつつ姑息な敵対をつづけてきた中核派の一員としてスパイ活動を担った彼川口君にたいし、われわれは、当然にも原則的な自己批判を求めた。そして彼はスパイ活動の事実を認めた。それゆえわれわれは、さらに、彼のスパイ行為そのものへの誠実な自己反省を追及した。

 

 ところがこの過程でわれわれの意図せざる事態が生じた。彼は、われわれの追及の過程で突然ショック的状況を起し死に至ったのである。」