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「ここおったらヤバイかも!?」「ああ、もう無理や」…家出して大阪・西成に辿り着いた20代男性が現場仕事を飛び続けた“驚きの言い分”

『人生、しばしばホームレス』より #1

genre : エンタメ, 読書

10日契約なのに2、3日で飛んだことも

 休憩の時は、ヘルメット置いて、ちょっとジュース買いに行くとか、そういうのはできたから、そん時に逃げる。そんなことも何度となくやってきてる。とにかくバレて、なんか言われんのイヤや。

 寮の場合は、持っていける荷物がありゃあ持って行ったりはしたかな。仕事道具みたいなんはもう置いて行く。荷物になりそうなんはもう持って行かない。基本、見つからんように、なんとか目え気にしながら出た。

 なんにも悪いとこがなかったら、満期までおることもできたけど、なんか自分にとってマイナスのことが出てくると、当時はようけ仕事あったから、「辞めてもまた行くとこあるわ」みたいな感じで、ポーンって辞めてた。

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 事務所の対応であったり、現場の仕事であったり、そこで働いてる先輩とか職人の態度であったり、もしくはその飯場の寝泊りするところの雰囲気、ボロかったりなんやかんやアラを見つけて、とにかくなんか一つでもイヤなことがあったら、それがもう合わないとかなんだかんだ自分で理由をつけて「ああ、もう無理や」と。

 下手したら、10日契約やのに2日か3日行って、その前借りの金を持って辞めるとか。10日頑張りゃいいけど、もう身体も精神も持たないから、2、3日で飛ぶ。

「アイツは使われへん」

 会社行って、雰囲気というか自分の感覚として「あっ! ここおったらヤバイかも!? これやっぱりヤバイわ!!」思って、その日のうちに逃げるっていうのもあった。

 ほんまトンコ(仕事現場から逃げ去ること)しまくってた。現場から逃げたとか、会社の寮から逃げたとか。もちろん俺だけではなかったやろうけど、何十回もやってた。

 普通やったら、飯場の仕事でもきちっと「辞めます」言うたら、お給料もくれるんやけど、前借りして少し金がたまったら、もう黙って辞めてた。そんなことばっかりして、黙って辞めるのがもう常習化してしもうた。それがずーっと続いた。

 ただ、そんなことをずーっとやってると、当時のその飯場の手配師の中では、「アイツはまともに仕事できへん奴」やと思われて、いっとき、

「アイツは使われへんっていう話が出てたで」

 って知り合いが言うてた。

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人生、しばしばホームレス

中川波佳 ,かっちゃん

さくら舎

2022年5月11日 発売

「ここおったらヤバイかも!?」「ああ、もう無理や」…家出して大阪・西成に辿り着いた20代男性が現場仕事を飛び続けた“驚きの言い分”

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