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「ここおったらヤバイかも!?」「ああ、もう無理や」…家出して大阪・西成に辿り着いた20代男性が現場仕事を飛び続けた“驚きの言い分”

『人生、しばしばホームレス』より #1

genre : エンタメ, 読書

 自分の体形がその作業に合ってないにもかかわらず、生きるためにせざるを得んかった。

 もっと自分の身体に合うた仕事をすればよかったんだけど、微々たる金をもらいたいがために、自分の体形に全く合わない仕事をしてた(肉体労働ではない警備員の日雇いもある)。それが一番しんどかった。

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「ハンマー持ってこい!」頭ごなしに命令口調

 偉そうに言わん職人さんとか、元請けというか上の会社の人でも、いい人と当たったら、まあしんどくても一応楽しくできる。

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 人間関係でいい人と出会えれば、楽しいというか「頑張ってよかったな」っていうのはある。でも、職人って結構口悪かったりしたから、偉そうにされたりもした。

 作業してて、口癖でちょっと偉そうな言い方する人は、「こういう人なんやな」ってわかるから、そういう言い方は全然ええんやけど、自分の会社の人間でも、よその会社でもそやけど、普通に言うたらええところを、かっこつけたいんか分からんけど、なんかちょっと偉そうに言う。

 職人が、足場の5階とか6階から、偉そうに、

「ハンマー持ってこい!」

 って、下におる俺に言うて、わざわざ地上から5階とか6階とかまで上がって渡す。

 自分で最初っから用意しとったらいいのに、なんか忘れたんかなんか知らんけど、地上におる人間に向かって、偉そうな言い方しとった。

 嘘でもいいから、「悪いけどちょっとそれ持ってきてや」ぐらいやったら、「ああ、分かりました」言うて行くけど、頭ごなしに、なんか命令みたいな感じやった。

会社にバレずに逃げるために

 明らかに見下したような言い方をされたって分かると、「しんどい思いして我慢してるのに、なんで頭ごなしに言われなあかんねん。別に一生この仕事で食うつもりでやってるわけじゃないから、そんなん言うんやったら、別にこっちは逃げたるわ」と。

 逃げんのんあかんねんけど、現場から逃げることもあるし、会社(飯場)帰って、行かないかん」とか思って、もうイヤになって、その会社の寮から逃げることもある。

 逃げる時は着の身着のままで逃げる。現場に、弁当とか仕事着とか持って行くけど、それも置いて、自分の身体一つで逃げる。荷物をちょっとうまいこと持って逃げたこともあったかな。

 見つかって、 「お前逃げるんか?」とか、ああだこうだ言われるのがイヤやったから、会社にバレずに逃げるためにはもう身体一つで逃げる。