大学に入学するも半年で退学、学習塾を経営する父親から便宜を受けて正社員として働き始めるも4ヵ月で家出、紆余曲折を経て始めたコンビニアルバイトも1年弱で退職……。「嫌気がさしたらすぐに投げ出してしまう“リセット癖”がついている」と自身の性格を評すのは、今も生活保護を受けたりやめたりの生活を続ける男性“かっちゃん”だ。

 ここでは、そんな“かっちゃん”のモノローグを、社会的弱者の取材活動に取り組む中川波佳氏がまとめた著書『人生、しばしばホームレス』(さくら舎)の一部を抜粋。かっちゃんが大阪・西成のホームレスシェルターに入所した当時のリアルな心情について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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仕事干された

 仕事何日かやってて、体調崩したり怪我したりして「体調崩して休みたい」言うても、会社が「ズル休み」みたいな感じでとっちゃうと、「ほんじゃあもう来んでええ」とか、仕事減らされたりする。

 仕事の内容によっては自分ができないような仕事やって、「やっぱりちょっとこれはできません」とか言うと、やっぱり仕事干されたりする。

 穴掘りとか、土のならしとか、土木作業員とかやったら誰でもある程度できる仕事やったらもちろんやるけど、鳶職の手伝いとか、技量というか、手に職なかったらちょっとしんどいような仕事は、「ちょっと無理やな」と思った。

 鳶の手伝いとかも結構力がいる。工事現場とかで、足場を組む鉄パイプみたいな単管が結構重かったりする。

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言われた通りやってもうまくできず

 鳶職と土方は全然力の入れ方とか違うのに、自分ところの「鳶と同じぐらい持て」と。要は、4メートルとか5メートルぐらいの重い単管を、

「1本ずつやあかん。2本3本持ってこいっ!!」

 それも、1回2回じゃなくて、ほぼ一日やらないかんとか。

 持たないかんのは分かってても、自分の身体で持てる限界あるから、それ以上を当たり前みたいに「やれ!」とか言われると、「ちょっとしんどいな」と。

 鳶の負担のかからない上手な持ち方したら、多少は持てたりするんやろうけど、鳶に「できるやろ」っていう頭で多分おられてたと思う。

「こうすんやで」みたいなことは、教えてくれた人もおったやろうけど、手取り足取りっていう感覚じゃなかったかな。「こうやで、こうするんやで」みたいな。言われた通りやったりもしてたけど、なかなかやっぱり慣れてなくて、うまいことやれんかった。