慣れてしまうと居心地がよくなってしまう
そういう被害というかそういうイヤなこともあったし、裸でも歩いとるようなおっさんもおったし、やっぱり劣悪な環境やった。
奇声発したり、訳の分からん独りごと言うてみたりしてるのもおったかな。そんなん見ると、「こういう環境の中でも、一番ヤバイレベルの人なんやな」っていうのはやっぱり思ってた。
ただ、それでも、西成ではそこしか寝るとこなかったから、仕事してない時はそこで寝泊りはしてた。
住めば都というのもおかしいけど、慣れてしまうと居心地がよくなってしまうというか、慣れるまではもちろんイヤやし、慣れても汚い環境というのは変わらんから、なんも好転しないけど、その環境に適応できたら、それはそれで居心地がいいというか、「もうここでええわ」っていう感じになるんかな。
火事やっ!! これヤバイ!!
27歳ぐらいん時に行った契約は、寝タバコかなんかで火事起こした奴がおった。木造の2階で寝てたけど、深夜1時頃になんか騒がしなったから、「なんでこんな時間に騒いでんねん!?」って思って、窓の外を覗いたら、隣の隣ぐらいから火が出てて、下におった人間が、騒いどった。
「火事や!! 火事やっ!!」
「これヤバイ!! とにかく外に出なあかんわ!」と思った。
逃げてる奴もようけおって、すぐ火出よったぐらいやったから、切羽詰まって2階の窓から着の身着のままでパッと脱出した。
ほんとになんとなしに窓開けただけやったから、焼け死んどったかもしれんし、普通の窓やったから逃げれたけど、強盗防止みたいな窓やったらとっくに死んでたやろうから、そういう意味では「普通の窓やってよかったわ」思った。
1人、その火事で亡くなられた。
寝タバコしてたおっさんは逃げたみたいやけど、夜中にウロウロしてたのが怪しいいうことで捕まって、会社の人に怒られてた。
会社の人間に話聞くなりなんなりしたら、
「火災保険入ってないから、弁償ができへん」
そんな話を聞いて、「こんなとこおってもヤバイ!」って思った。
お金もらえるかどうかも分からんし、そんな火事起こしてもうてるから、どこで寝ないかんかとか、事故の後処理とかそんなん色々めんどくさくなった。
その飯場で知り合った同学年ぐらいのお兄ちゃんが、
「こんなとこおってもあかんし、西成に戻りましょう。西成戻ったら、一緒に仕事しましょう」
言うて、2人で西成に帰った。
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