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「こういうとこに残ってる人は、もう終わってんな」西成の日雇い労働者が無料ホームレスシェルターで体感した“リアルな心情”とは

『人生、しばしばホームレス』より #2

genre : エンタメ, 読書

note

 変な持ち方したら、怪我すんのんも怪我させんのんもイヤやろうから、

「危ないっ! ちゃんと力入れてきちっと持ちっ!!」

 とか言われた。

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自分だけが集中して休まされるように

 あと、番線っていうか針金っていうか、その鳶が使うような道具使って、「足場をちょっと固定しろ」とか。

 いい加減にやっとったらやっぱ危ないから、ちゃんと固定できてなかったら、もう鳶さんとか土木作業員とかできる人がパッとやっちゃったりしてた。

 現場行った以上やらなしゃあないからやるけど、会社帰ってから、毎回言うたわけじゃないけど、

「今日の仕事行ったから、まあやったけど、ちょっともうできません」みたいなこと言うた時もあった。できんとこを行かされても続かへんし、ちゃんとできへんから。

 結局そういうのがちょっと続いたりすると、まあ使い勝手が悪いとか、会社側の判断で、仕事をちょっと休まされる。明らかに自分だけが連続で休まされるとか。人間が、20人出ないかん仕事に21名おったら、明らかに自分だけが集中して休まされるとか。

 会社によっては、出席と欠席みたいな感じで、名前張り出されとって、休みって欄に名前ついとったら休み。

飼い殺し

 京都の飯場に行った時、みんな仕事行かしてもうてるのに、俺だけ行かしてもらえんくなった。

 2ヵ月ぐらい普通に仕事やって、俺が人付き合いが悪かったのか、単純に仕事できんかったんか知らんけど、

「アイツはつかいもんにならんから出してもしゃあないですよ」

 って会社の人間に言うた奴がおった。

 そのあとは、もう全然仕事出れんくなった。ほぼゼロぐらいちゃうかな。

 仕事は出してほしかったけど、のんびりできるからそれはそれとして、色んな気持ちはあった。

「仕事やってる時はそれなりに真面目にしてたはずやのに、つかいもんならんとかなんでそんなこと言われなあかんねん。つかいもんにならへんとか俺を毛嫌いするような言い方するほど、その人間になんかやったかな」とか思った。

 朝方に「どこの現場に誰それ誰それこの車乗って行ってね」とか発表されるけど、それに声かからんかったら、もう解散やっていうのは会社に言われとったから、「仕事出してくれ」とか問い詰めてまでは言わんかった。つかいもんにならんみたいなレッテルを貼られてしもうた以上、ああだこうだ言うてもくつがえらんかな」と思った。