2025年、団塊の世代が後期高齢者となり、医療や福祉の需要は必然的に増していく。大手人材派遣・パーソルの試算によると、2030年には医療・福祉の分野で187万人の人手不足が発生するという。これは群馬県の人口に匹敵する規模だ。
さらに拍車をかけるように、近年の新型コロナウイルス禍で派生する激務から職場を去る看護師や介護士は後を絶たない。東京都内の総合病院に勤務するキャリア15年の看護師は次のようにこぼす。
「コロナのために業務は増える一方です。通常の業務に加えて感染対策などについてもこれまで以上に過敏にならないといけない。休暇が取れても人が集まる場所などには出かけないよう心がけている。そんな窮屈な生活が2年以上も続いて、かなりストレスフルな毎日です。このままじゃ体が持ちませんよ」
2020年7月には給与面での不満などから東京都内の病院で看護師400人が離職の意向を示すなどの混乱もあった。話し合いの結果、大量離職には至らなかったが、日々の激務からくる不満は爆発寸前まで高まっていたのだ。実際、医師や看護師が離職する医療機関は少なくない。
今の山谷は「福祉の街」
私はここ数年、東京のドヤ街・山谷地区を取材してきた。大阪・釜ヶ崎、神奈川・寿町と並ぶ三大寄せ場のひとつである山谷は、高度成長期には日雇い労働者の供給元として機能した街だ。
その後、労働者は年を取り、医療や介護の世話なしでは生活できない人も増えた。そうした意味で、今の山谷は「福祉の街」となった。そして、福祉を必要とする人々を支えるのは高い志を持った看護師や介護士たちである。
山谷にある訪問看護ステーション・コスモスの代表、山下眞実子さんは次のように語る。