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戦争で征服された町での“女性の自立”を描く…司馬遼太郎、幻のデビュー作を現在によみがえらせたコミカライズの想像力

『ペルシャの幻術師』2巻発売記念 蔵西さん×高木小苗さん対談<前編>

2022/05/20

source : 文春コミック

genre : エンタメ, 読書

note

主人公・ナンの初期の服装は今のイランではNG

蔵西 キャラクター造形にもご指摘をいただいて、直していきました。特にナンは、高木先生のイラン人のお友だちの感想も教えてもらって。

 最初は色気重視で(笑)、おへそとかも出していました。

高木 原作にもナンは髪や肌がみえる装いをしていたとあります。

 ですが、おへそを出すと、踊り子風の衣装という印象を受けやすく、オリエンタリズム的な描写とも解釈することができるので、避けたほうがいいと思って、少し現代的な観点でもご相談しました。

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町を歩くナンの登場シーン(『ペルシャの幻術師 1』より)

蔵西 ナンは、ペルシャの人じゃない、異国人だって設定です。そうだとしても、当時のイスラム社会では髪をこんなに出すのは異様かな?とも思ったんですけど、それだと読者の皆さんに愛してもらいづらいかなと思って、こんな形に。

 ボルトルがナンの髪を気に入っていて、いつも髪を出しているように望んだ、という裏設定もしてました。

高木 異様だから、原作にもあるように、町中でも目立っている、ということじゃないですかね。

 それに、妃候補の女性はあまり外を出歩かない。リアルに考えれば、だから、そもそもちょっと変わった子、という感じではありますよね(笑)。