「役所では『ご本人様は?』『ご本人です。美沙子です』って」…トランスジェンダー格闘家(31)が語る、性別を変えるまでの“苦労”

進一さんインタビュー #1

平田 裕介 平田 裕介
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 19歳で治療を始めて、20歳で美沙子から進一に改名して、その後に就職しているので。しかも、胸つぶすシャツ着て仕事してたし。めちゃくちゃ暑かったけど、バレるのが嫌すぎて、無理に着てました。 

 名前を変える前はいろいろめんどくさくて。特に役所に行くとき。本名を言っても「ご本人様は?」「ご本人です。美沙子です」みたいな。当時もほぼこの見てくれだったけど、これで美沙子はおかしいし、これで自己紹介するのも嫌でしょ。 

現場仕事時代の進一さん(進一さん提供)

眉ペンでヒゲを描いていた時代

一ー「早く男として見られたかった」からこそ現場仕事に就いたわけですが、そういった想いはファッションにも反映されそうですね。ヤンキー系、ギャル男、EXILE系と、“男”の部分が際立ったルックにしてきたそうですけど。 

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進一 そう(笑)。自分が抱いていた男のイメージが、そのあたりで。いま思えば、そうやって意識することが女々しいなと。「そこじゃねぇよ」って感じですね。 

一ーユニクロや無印良品の服で小綺麗にまとめてみました、みたいのは嫌だった。 

進一 ダセえ、弱えって感じに見てました。舐められたら終わり、強ぶってなきゃいけない、みたいな。もう、オバカだったから。恥ずかしい、振り返ると(笑)。いまはなんとも思わないし、自分の好きな格好してます。 

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 あと、若く見られるのが嫌だった。年相応に見られないのも、まずコンプレックスだったんですよ。ヒゲを生やせば多少は年上に見られるかなって考えるけど、生えてこない。しょうがないから、自分でわざわざ描いてましたからね、眉ペンでヒゲを。 

 

一ー最初の荷揚げの会社は、どれくらい勤めたのですか。 

進一 2年。辞めるときにカミングアウトしたけど、社長も驚いてましたね。胸をつぶすシャツを着て働いてたし、仕事もこなしちゃってたし、当時はいまみたいに女性の職人さんっていなかったから、そんなこと思いもしない。ましてや、FtMがそんなキツい仕事を率先してやってるなんてね。 

男性ホルモンを打っても、生理は来ていた

一ー治療の話に戻ると、その時期は男性ホルモンだけですか? 

進一 その間は、ずっとホルモンだけ。男性ホルモンを打っていたのに、生理は来てました。生理が止まる、止まらないって、個人差があるみたいで。 

 逆に、すぐ変化が出たのは声。治療前は声が高かったから、喋っちゃうとバレちゃってたんですよ。「かっこいい」とか「イケメン」とか言われても、「ありがとう」のその一言で「ん? 女の子なんだ」みたいな。