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二ー二ーだけじゃない、朝ドラ定番の“ダメ男”

 むしろ朝ドラの伝統とも言えるほどの定番で、前作「カムカムエヴリバディ」の初代ヒロイン安子(上白石萌音)の兄・算太(濱田岳)は人様の物を盗み、妹が貯めた金も持ち逃げするような男だったし、2代目ヒロインるい(深津絵里)の夫ジョー(オダギリジョー)も長年無職で、臨月の妻が大きいお腹をして回転焼きを焼いていたときさえも仕事を手伝っていなかった。「スカーレット」の父親・常治(北村一輝)や「おちょやん」の父親・テルヲ(トータス松本)だって、ひどかった。

 何より「ちむどんどん」と同じく沖縄を舞台にした「ちゅらさん」(2001年)を思い出してほしい。ヒロイン・恵里(国仲涼子)の兄・恵尚(ガレッジセールのゴリ)は、単なる思いつきでゆるキャラ「ゴーヤーマン」のグッズを生産して販売し、案の定まったく売れずに、家のお金をすっからかんにして沖縄から失踪した。父親・恵文(堺正章)も民宿を営んだりタクシー運転手になったりして仕事が長続きせず、頼りにならなかったではないか。

「ゴーヤーマン」のイラストを持つ「ちゅらさん」ヒロインの兄・恵尚(ゴリ) サイト「NHK放送史」より

 Twitterの感想には、沖縄を舞台にした作品として「ニーニーのような長男像はとてもリアル」という声も上がっている。優子のように息子を甘やかす母親というのもありがちだそうだ。

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 南国気質というか、本当にそういう地域性があるのかはわからないが、沖縄県発表の統計には、完全失業率が全国平均に比べて高く、特に若年層で働いていない人が比較的多く、さらに親と同居している若者にその傾向が強いというデータがある(*1)。ドラマの公式ガイドブック(『NHKテレビドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ちむどんどん Part1』)では、沖縄県出身の黒島結菜が「家族の描写も沖縄そのものでびっくりしました」とも語っている。

 同ガイドブックによると、もともと比嘉家は「若草物語」のような四姉妹を想定していたが、脚本の羽原大介氏の提案により、長子を男に変更。羽原氏の実父を賢秀のキャラクターに反映したという。羽原氏の父は賢秀と同じく下に3人の妹がいる長男で、亡くなるまで家族に迷惑をかけ通しのやんちゃな男性だったとか。賢秀は1950年前後の生まれという設定だが、羽原氏の父は賢秀と近い年代だそうだ。

『ちむどんどん』比嘉家の4兄弟(NHK公式サイトより)

 つまり、ニーニーには実在のモデルがいて、ある程度リアルな設定らしいのだが、「憎めないトラブルメーカー」とされるその人間的魅力が地域や世代のギャップを超えて伝わってはいない。というか脚本や演出の意図が伝えられていない。

「#ちむどんどん反省会」タグでは「ニーニーが山口県阿武町の誤入金事件で逮捕された男性とかぶる」という声も。たしかに、自分のものではないのに手元に入った金をギャンブルに使ってしまうような人物は、コロナ禍と円安と物価高で多くの人の生活が苦しくなっている現在、笑って見てはいられない。