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 元NHKの永田浩三武蔵大教授はまず、沖縄に関するテーマは大きく難しいと述べる。さまざまなニュースを扱い、日々短い枠で伝える報道機関には「沖縄」は不得意な分野だと。そして、

「節目を使って掘り下げる報道の意味はあるが、簡単ではない。節目にこだわらず、断片的でいいから沖縄で起きることを伝え続けることが大切だ」(東京新聞5月10日)

 これを読むとNHKのOBは、沖縄報道はまだ足りないと思っているようだ。

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 ここまで挙げてきたように、在京メディアでは沖縄基地問題に関して「視聴率がこない」「ことさら大きく取り上げる」「不得意な分野」などと考えを示している。

朝日新聞5月18日の紙面

沖縄の地元紙の「実感」は?

 では、沖縄からはこの様子はどう見えるのか。

 私が熟読したのは共同通信の企画だった。本土復帰50年にあわせ、地元の沖縄タイムスと琉球新報の編集局長の寄稿を全国に配信したのである(私は山梨日日新聞や信濃毎日新聞などで確認した)。

 抜粋しよう。まず沖縄タイムス。与那嶺一枝編集局長は基地問題だけでなく憂鬱の理由は他にあると書く。一つは「女性への深刻な人権侵害である暴行事件が依然として起き続けていること」であり、もう一つは「激変する安全保障環境」。

©iStock.com

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、安全保障をめぐる危機感を強めた政治家からは「台湾有事は日本有事」「核共有」「防衛予算倍増」「敵基地攻撃能力」と勇ましい発言ばかりが聞こえてくるが、沖縄の実感からするとリアルではないという。

《台湾有事の備えというならば、外交力の強化策や、武力衝突に巻き込まれる可能性が高いといわれる146万沖縄県民を守る議論が政治家から出てこないのはなぜだろう。日本の中で最も切実に生活者が安全保障について考え、民主主義を問うてきた沖縄からの率直な疑問である。》

 地元沖縄からすれば、この機に「悲願」を達成したい人たちは自らの思いが先行しているだけで沖縄そのものは心配していないではないか、という実感。