暴力団組織や外国人犯罪グループ、覚醒剤の密売組織など、組織的に犯罪を行う集団を専門に捜査している警視庁組織犯罪対策部が4月、部内を改編し新体制がスタートした。新体制に求められる大きなテーマのひとつが「半グレ」と呼ばれる不良グループが引き起こす事件への対策だ。(全2回の1回目/続きを読む

「暴力団対策課」新設の目的は…?

 半グレによる事件のうち最も被害が甚大なものとして、振り込め詐欺などの「特殊詐欺」があげられる。近年は取り締まりの強化により被害額は減少傾向にあるが、それでも毎年300億円前後の被害が発生している。警視庁組対部の組織改編で、特殊詐欺撲滅に向けた警察当局と半グレの間の新たな攻防が本格化している。

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 改編前の警視庁組対部では、暴力団構成員らが繁華街の飲食店などから用心棒代などを徴収していた場合に中止命令を出すなど暴力団排除を組織犯罪対策3課が担当し、暴力団による犯罪については組織犯罪対策4課が捜査し事件化してきた。4月の組織改編では、その組対3、4課が統合されて「暴力団対策課」が新設された。

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 警察当局の幹部は統合の主な目的についてこう説明する。

「これまでの暴力団犯罪捜査に加えて、半グレによる事件を捜査することも大きな目的です。半グレは暴力団と連携して活動しているケースもある。半グレが資金源としている特殊詐欺については、特に集中的に捜査を進めています」

振り込め詐欺事件で「掛け子」のアジトから押収された携帯電話やマニュアル ©時事通信社

ヤクザにはなりたくないけど、楽に稼ぎたい

 半グレのネーミングの由来は、「半分グレている」といった意味合いや「半分グレー」との説もある。半グレが増加傾向にある近年の傾向について首都圏で活動している指定暴力団の古参幹部は、自嘲気味にこう指摘する。

「最近の若者には『ヤクザにはなりたくないけど、楽に稼ぎたい』という者が多いということだろう。ヤクザになるとほとんどの場合、最初は部屋住みといって親分の家に住み込んで、掃除や洗濯、お客さんの接待などの雑用をする。親分が出かける際には運転手もやる。そのほかに決まりごとも多い。若い連中にとってはそういうしきたりが面倒なんだろうな……」