国内最大の暴力団、6代目山口組が2015年8月に分裂し、離脱した神戸山口組との対立抗争状態は間もなく丸7年になろうとしている。

 緊張状態が続くさなかの2022年5月8日未明、神戸山口組副組長という組織の「最高幹部」であり、傘下組織の宅見組も率いる入江禎の大阪府豊中市の自宅にバックで車が突入し、一部が破壊される事件が発生した。

 この事件で、建造物損壊容疑で逮捕されたのが大阪の繁華街・ミナミを拠点にした半グレグループ「アビス」の元幹部の男(26)だった。

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 そのことが判明すると、警察当局、暴力団業界の双方が騒然となった。というのも、これまで山口組同士の抗争に半グレが参入することは無かったからだ。

「ついに半グレがヤクザ間の抗争にまで参入し、新たな局面へと展開するのか――?」

 そんな憶測が飛び交ったのだ。(全2回の2回目/前編を読む)

©️iStock.com

抗争で逮捕されるのは暴力団構成員がほとんど

 6代目山口組と神戸山口組の間だけに限らず、暴力団同士の対立抗争では、敵対する組織の幹部らを銃撃したり、刃物で襲撃するなどの殺人や傷害などの事件は珍しくない。相手の事務所に向けての拳銃発砲、火炎瓶の投げ込み、ダンプなどの大型車両を突入させる事件はこれまでも数多く繰り返されてきた。

6代目山口組の司忍組長 ©時事通信社

 当然だが、事件現場で身柄を取り押さえられたり、後になって出頭したりして逮捕されるのは暴力団構成員というケースがほとんどだ。だからこそ、ヤクザ同士の諍いに半グレが関わった今回の一件には大きな意味があった。

 ただ、警察当局の幹部は、あくまで「半グレがヤクザの抗争に関与したというケースはこれまで確認されたことはない」というスタンスだという。今回、入江の自宅に車両で突入した事件についても「6代目(山口組)と神戸(山口組)の対立抗争に半グレが新たに参加したわけではないと捉えている。逮捕された人物についても警察としては6代目山口組傘下の弘道会の構成員か準構成員と認識している」と強調した。実際にアビスは現在、「解散した」とされており、あくまで事件の構図は従来の対立抗争の延長線上にあるとの認識を示している。