ヤクザになった若い衆には、一体どんな生活がまっているのか――。暴力団に加入した若者は、まず親分の事務所兼自宅などに住み込みで行儀見習いをする「部屋住み」という修行を重ねることが習慣とされている。

 首都圏に拠点を構える指定暴力団の古参幹部が、入門したころを振り返る。

「事務所を兼ねた組長の自宅の“住み込み”として何でもやった。早朝に起きて、まずは朝飯を作る。掃除もこなすし、昼飯で店屋物となれば出前の注文もする。お客さんが来たらお茶を出すなどの接待も重要だった。組長が出かけるとなれば車の運転でお供する。何かと仕事は多かったが、事務所にいる限りメシには困らなかったし、お使いを言いつけられれば小遣いをもらえた。

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(写真はイメージ)©iStock.com

 だが、サラリーマンのように週末になれば休みという訳ではない。組として競馬や競輪でノミ行為をやってシノギ(資金獲得活動)としていたから、土曜、日曜も早朝から仕事だった。とにかく事務所から出られなかった」

警察幹部が見た「部屋住み」の若者たち

 事実上の独立を認められるようになるには、それなりの時間が必要だという。

「部屋住みを終えてしばらくすると、繁華街のスナックの面倒を見るなどの仕事を任されるようになった。そこからはじめて、いまは自分の組を持って事務所を構え、盃を交わした十数人の若い衆を抱えるようにまでなった。ケンカとなれば若い衆のほか、この周辺の数十人を集めることができるようになっていた」