暴力団組員になろうとする若者は、組長の自宅や事務所に住み込んで行儀見習いなどをする「部屋住み」という立場からスタートすることが多い。
関西地方に拠点を構える指定暴力団幹部は、「最初の親分との出会いが重要だ」と強調する。
「入社したばかりの若いサラリーマンが、能力が優れていて人柄の良い上司に恵まれれば、仕事を早く覚えられるし伸びる。ヤクザである我々も同じ。ヤクザだけでなくカタギにも顔が広くて、シノギ(資金獲得活動)がしっかりしている親分の若い衆になったら、それは幸運なことだ」
「親分が誰とどんなシノギをしているかを間近で見られる」
この幹部がさらに続ける。
「若い時に親分の運転手などをやっていれば、いろんな所に出かける際にお供することになる。ヤクザの同業者だけでなく、カタギの旦那さんたちも含めて、どのような人たちとどんな付き合いをしているのか間近で見ることができる。例えば、金融関係の人と親分がどんな仕事を一緒にやっているのか。不動産会社の人が相手ならどうか。ここから学べることは多い」
サラリーマンなら入社すれば、その月から給料が支給される。しかし、暴力団員の場合、給料が支給されるわけではなく、警察用語でいう「上納金」を組織に納めなければならない。これが一般社会と決定的に違う点だ。暴力団の代紋を背景に仕事をしているためだ。「部屋住み」と呼ばれる期間が過ぎれば、自分でシノギを探すことになる。
この点について前出の幹部が解説を続ける。
「例えば縄張りとしている繁華街の飲食店などからのみかじめ料などをシノギにしている者がいて、上部へと出世したとする。するとこの縄張りを若い衆に任せるということはある。うまく引き継いだ若い衆はさらに未開拓の飲食店などに話をつけて交流の幅を広げられる。もちろん上手く引き継ぐことさえ出来ないケースもある。それは器量次第」