「月のシノギが数千万円」も珍しくなかった
このあたりは一般企業の営業マンの感覚と同じだという。
「とにかく部屋に閉じこもっているようなヤクザは失格。外に出て行って人と会わないと始まらない。例えて言うなら、石は蹴飛ばさないと分からないというもの。石を蹴飛ばして飛んで行ってしまったら、ただの石ころ。だが、蹴飛ばしても動かない石もある。こうした石は深く埋まっていて、そこを掘れば大きな鉱脈が見つかるかもしれない。つまり、いかに石を蹴り続けるか。とにかく何かすることが重要だ」
1980年代から90年代前半のバブル景気だったころは、「地上げ」という仕事が不動産業界から暴力団業界に持ち込まれ、多くの組織に恩恵がもたらされた。
一部の暴力団幹部は、「月のシノギが数千万円ということも珍しくなかった」と証言している。銀行などの金融機関は融資先を求めて貸し出し競争に明け暮れ、暴力団関係者が関わっている事業にも多くの資金が注ぎ込まれた。
「店としては付き合えないが、個人でなら」
しかし、バブルが崩壊した後の1992年に暴力団対策法が施行され規制が始まった。さらに追い打ちをかけるように2011年までに全国で整備された暴力団排除条例による規制で、近年は暴力団の資金源は縮小し暴力団構成員は年々、減少している。
この点について、首都圏の繁華街に拠点を持つ指定暴力団幹部が、「暴排条例ができて、みかじめ料はかなりの飲み屋から断られた。全国に展開しているような大手チェーンの飲食店はダメだ。コンプライアンス(法令順守)とか難しいことを色々と並べてくる」と現状について明かす。
「それでも『店としては付き合えないが、個人でなら』ということで、店長や責任者クラスがポケットマネーで付き合ってくれることもある。そのほか昔からの付き合いのある店もまだまだある」(同前)
警察当局からするとこうしたチェーンの店長らの行為は背信かもしれないが、暴力団側からすると石を蹴飛ばし続けてみた成果ということかもしれない。