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暴力団犯罪を長年担当していた警察当局の幹部OBは、捜査のなかで暴力団員の部屋住みを目撃していた。
「現役の刑事だったころ、情報収集や動向監視のためにヤクザの事務所を定期的に訪れていた。ある事務所では、まず玄関に入って靴を脱ぐ際に、部屋住みの若い衆が後ろから片膝をついて脱ぎやすいように靴のかかとをさっと押さえてくれた。脱いだ後は当然、若い衆がすぐに靴を揃える」
お茶を飲み干したら「即おかわりを準備」
さらに、若い衆による接待は続いた。
「応接室に通されソファーに腰を落ち着けると、若い衆が手際よくおしぼりとお茶を出してくる。組長との話が始まると、組長の近くに立ってじっと双方の動きを見ている。お茶を飲み干したら当然、おかわりが出てくる。こちらがタバコを吸って灰皿でもみ消したら、新しい灰皿とさっと交換する。だからヤクザの事務所ではタバコの吸い殻がたまって、そのままという灰皿はない。組長がタバコをくわえたらすかさず若い衆がライターで火をつける。これはよくあるヤクザ映画のシーンそのものだ」
愛煙家を自称する暴力団犯罪捜査の経験が長い刑事も同様の体験について語る。
「ヤクザの事務所では、若い衆にタバコに火をつけてもらうことは遠慮していたが、吸い終わるたびに灰皿はかならず交換された。しっかりした親分がいると若い衆も動きがよいものだ」