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暴力団に「資金を出してほしい」という半グレも……

 暴力団は直接的な関与だけではなく、半グレの活動のスポンサーになっていることもあるという。

 首都圏で活動している指定暴力団幹部が半グレとの関係の実態についての一端を明かす。

「半グレの連中が来て『資金を出してほしい』ということだったので、都合してやった。振り込め詐欺などのアジトとするマンションなどの費用なのだと思う。ただ、目的については聞かないことにしている。後々あいつらがマズいことになると、こちらの都合も悪くなるから。仕事がうまく軌道に乗ったのか、その後はせっせとカネを持ってくるようになった」

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 別の指定暴力団幹部は「アルバイト感覚で働いている若いヤツらの中には、詐欺で得た100万円ほどの現金をポケットに無造作に突っ込んで夜の街で遊んでいる」とも証言している。

2010年には西麻布で半グレメンバーと市川海老蔵のトラブルもあった ©AFLO

東京スカイツリーの総事業費を超えていた被害

 当初「オレオレ詐欺」と呼ばれていた特殊詐欺の被害が初めて確認されたのは2002年前後とされている。その後、被害は拡大する一方で、警察庁は2004年から被害状況についてデータを集計して分析を進めてきた。

 データ収集を始めたころの年間被害額は200億円台で推移していたが、2012年に300億円を突破、2013年には約489億円にまで被害が拡大した。未遂に終わった約193億円と合わせた「被害規模」になると、約680億円にのぼる。

 この被害規模をなじみのある建築物に当てはめてみると、東京都墨田区に2012年2月に完成し、今年5月に開業10周年を迎えた東京スカイツリーの総事業費約650億円を超える。

 2014年には被害額約565億円、未然防止が約296億円といずれも過去最悪を記録。ただ、2015年以降は取り締まり強化や広報活動により減少傾向となっている。

歌舞伎町「トー横」に集う若者たち ©文藝春秋

 2017年には400億円を割り込み約394億円へと減少。2020年はさらに減少して前年の300億円台から約285億円となり、最新データの2021年は約282億円となった。

 警察当局の幹部は、「最近は被害額が減少傾向とはいえ、年間の被害額は地方自治体の年間予算ほどということもある。さらに暴力団、準暴力団の取り締まりを強化していく」と警戒を強めている。

 ヤクザと警察、半グレによる“三竦み”状態は、果たしていつまで続くのだろうか?(#2へ続く)

山口組分裂の真相

尾島 正洋

文藝春秋

2022年5月25日 発売