「馬場さんに惹かれて、プロレスが大好きになった」
馬場のそんな“石橋を叩いて渡る”ような生き方を「アメリカで身につけたもの」と徳光さんは分析する。
「馬場さんは若いころ、片道切符でアメリカに渡り、西も東も回った。アメリカでの武者修行の時代に人と人とのつながり、結びつきを大切にすることで、人間関係、人としての地位、ポジションをつくっていったのではないか。人間力というんですか、それをプロレスに活かしていったのではないか。だから、馬場さんはアメリカのマーケットに圧倒的に強かった。プロレスラーとしてもプロモーターとしても広いアメリカを掌握していた」
「ニューヨークのテレビスタジオで試合をやって、それからすぐに中古のキャデラックを運転して、何時間も何時間もかけてフロリダの試合会場に移動するわけですね。車のなかで馬場さんは自問自答を続けた。どんなレスラーになったらいいのかということと同時に、どう生きていけばいいのか、人間的に成長するにはどうしたらいいのかということを自らに問いかけた。そういうとき、馬場さんは『上を向いて歩こう』を口ずさんだ。これが馬場さんの大きさ、リングを降りたときの魅力になっていた」
「馬場さんはハワイが好きで、ワイキキの景色をよく油絵に描いていた。雲、波、風があって……、その自然に力強さとロマンがある。『大宇宙のなかに人間がいるんだ』と語られていました。そういう馬場さんに惹かれて、私はプロレスを大好きになり、プロレスと深く付き合うようになっていったんだと思います」
徳光さんは、猪木については「寛ちゃんは寛ちゃんでものすごく魅力的な方」と語り、「お酒をいっしょに飲む機会は、むしろ馬場さんよりも寛ちゃんのほうが多かった」とふり返る。