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「4630万男」田口翔さんが、図らずも金融犯罪の対策に大貢献した件について

オンラインカジノ問題が賭博と犯罪収益移転防止の枠組みを揺るがす

2022/05/27

genre : ニュース, 社会

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日本社会のギャンブル問題を考える良い機会になったのでは

 なにぶん、刑事事件になりましたので、今回の件で満額弁済したからいいでしょうで終わりとはならず、決済代行業者も本件事件でポリスメンから調書を取られるところで大勝負があるのでしょう。金融サラ金系から過払い多重債務系まで、法曹関係者も総立ちになりますし、でも海外で運営されているオンラインカジノを日本では違法だから駄目だと差し止めることもむつかしいでしょうし、どうするんでしょうね。

©iStock.com

 もうこの際だから、海外のオンラインカジノやベッティングをある程度適法化処理してしまって、その代わり、賭けの具になっているスポーツや公営ギャンブルに対して運営協力金などの名目でバックするような仕組みを作ろうよ、という議論もまた再燃するかもしれません。Jリーグのサッカーくじもまた、FIFAが手がけるEWSみたいな八百長監視システムのような監視のもとでやるのは当然になっているいま、賭けの対象となるスポーツもうまくカネが回るエコシステムが必要なんじゃないかとも思うんですよ。

 例えば、アメリカのプロバスケットNBAでは、選手組合であるNBPAと共同で主催する試合に関するデータを放映権とは別に収集し、ベッティングで使う権利を売り、ベッティングの収益配分を得るような仕組みができています。アメリカでは2018年に国際的なスポーツベッティングが合法化され、NBAをはじめ野球競技(MLB、MiLBや独立リーグ含む)やF-1などもベッティングの対象になっています。

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 言い換えれば、スポーツでの賭けも、八百長を防ぐ仕組みを用意したうえで商業コンテンツの一形態として「二次利用」され、それが利用料としてスポーツの振興に資すればそれでいいじゃないかという割り切った議論になるわけです。

 かたや、日本ではこれらのスポーツベッティングは公営ギャンブルとの競合もあって違法のままで、いわゆる賭博と同じ扱いである限り、仮に欧米の上場企業が堂々と参入するようなオンラインカジノであっても全部違法という法的立て付けです。そればかりか、日本ではご存じの通りカジノ(IR推進法による滞在型リゾート)解禁となりながらも、パチンコ、パチスロなどの遊技業や、競馬競艇競輪など各種公営ギャンブルの扱いもまだ定まっていません。

 いまだに「パチンコは警察の利権」と思い込んでいる日本人も少なくなく、この辺の日本社会と賭博の関係についてあまり冷静な整理がされないままカジノ法案が通っちゃったというのが現状なのではないかと思っています。

 こういう世界的状況について、まさに議論のど真ん中を開拓してくれたのが俺たちの田口翔さんだったんだという現実を噛み締め、もちろん当面は違法な資金決済代行業者の摘発も進めていただきつつも、日本社会のギャンブルについてもう少し考える機会が来るといいんじゃないのかなと思う次第です。

「4630万男」田口翔さんが、図らずも金融犯罪の対策に大貢献した件について

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