5月も終わり、受験を経て進学校に入学した中学1年生たちも、その学校に合うか合わないかが分かってくる頃だ。この時期に保護者たちが特に心配するのは、せっかく入った学校で子どもの成績が不振に陥らないか、ということだろう。
受験業界の用語で「深海魚」というものがある。進学校で勉強についていけず、深海に漂うような成績に低迷してしまう生徒を指す言葉だ。
漫画『二月の勝者』(高瀬志帆・小学館)では、カリスマ塾講師の黒木が生徒を難関校に合格させたものの、そこで成績不振となり、遂には不登校になってしまうというエピソードがある。このことがきっかけで黒木は考え方を変えていくのだが、ここからは「無理やり上位の学校に入れても、落ちこぼれ、深海魚になってしまう可能性がある」とのリスクが読み取れる。
御三家をあえて避ける受験者たち
昨今、最難関校の受験者数は落ち着いてきているといわれる。たとえば、開成中学は2018年には倍率が3倍だったが、2022年は2.5倍である。一方、新興の共学校、広尾学園小石川中学の2022年度倍率(開成と同じ2月1日の試験)は12.9倍。実際、中学受験を控える子供を持つ保護者たちの間では、「なにがなんでも御三家」といったふうにはならなくなってきている。
2022年に中学受験を終えた息子を持つ保護者がいう。
「塾からは開成を受けてはと薦められました。その時に思ったのは、仮に合格しても息子が勉強についていけるかということでした。開成は中学から全員が高校に上がれるわけではないですからね。レベルが高すぎる学校に入れても不安ですから、結局、他の学校を第一志望にしました」
こういった保護者たちの不安感に学校側も気付きはじめ、説明会で「深海魚」対策をアピールするところも増えている。
「卒業生が勉強の仕方をコーチングする。そういった補講をやる」と話す難関女子校があれば、「成績不振者には卒業生を家庭教師として派遣する」と説明する中堅校もある。
放任主義の進学校も多いが……
だが、もちろん、こんな手厚い学校ばかりではない。まだまだ放任主義の進学校も多いし、手厚さを売りにする学校でも、実際は成績上位の生徒しか相手にしてくれなかった――という事例も耳にする。
関西出身で現在、東京23区内の塾で教室長をつとめる人物はいう。