「関西と関東では保護者の意識に差があります。関西で灘中学に受かって辞退する子はまずいませんが、東京だと筑駒(筑波大学附属駒場中学校)や開成に合格しても、偏差値ではワンランク低い学校に進学するケースがしばしばあります。共学に行きたい、家から近いといった理由での選択もありますが、『この子は最難関校でついていけるだろうか』と心配し、別の学校に入れる保護者もいます。
ただ、僕が知っている限りでは、ワンランク下の学校を選んだからといって、必ずしも“深海魚”にならないともいえないように感じるんですよ」
「繰上げ合格」で難関校に入学する不安
以前、私は不登校児の保護者たちを取材したことがある。その中には難関校や進学校の「深海魚」とされる子供たちも多くいたが、彼らはギリギリの成績で合格したというわけではなかった。そのときの感覚では、たしかに「入学時の成績」と、「入学後についていけなくなるかどうか」の間には、さほど関連性がないように思えた。
御三家に並ぶ中高一貫の難関校、豊島岡女子中学の公式サイトを見てみると、Q&Aコーナーで「繰上げ合格で入学できても、他の人たちについていくのが難しくありませんか?」という質問がピックアップされている。それに対し、学校側はこう答えている。
「入学してからの学業成績は必ずしも入試の成績に比例するものではありません。大切なのは本人の満足度と姿勢です。繰上げ合格でもまったく心配はありません」
実際に、最難関共学校に子供を通わせている保護者も、「4月に先生から“入試の成績と入学後の成績は関係ありません”と説明されました」という。では、入学後にペースを乱してしまい、深海魚になってしまうのはどんな生徒なのか。
「勉強のセンスがいい子」のリスク
武蔵対策に強い中学受験塾進学教室アントレの代表、柏原大夢さんはいう。「さほど勉強しなくても、“センス”がいいと難関校に合格してしまうことがあります。そういう子が苦戦するケースはあります」
たとえばある大手塾では、毎年、成績下位のクラスの生徒が難関校に合格することがある。その塾のクラス分けテストは幅広い範囲から出題され、基本的な問題が中心だ。そうしたテストでは点が取れず、下位のクラスに組分けされてしまうものの、特定の分野では難問を解く先天的なセンスを持つ子供がいる。
そうした子の場合、得意分野が運良く入試で出題されると、合格を勝ち取ることがある。
だが、そうした“センス勝負の子”は、入学後、猛勉強をして入ってきた同級生のペースについていけなくなることがあるのだという。