「うつむいて学校に行く子」は危ない
さらに、もうひとつ「深海魚」になりやすいタイプがいる。『令和の中学受験』(講談社)の著者でスタジオキャンパスの代表、矢野耕平さんはいう。
「うつむいて学校に行く子ですね」
つまり、希望した中学に入れず、暗い気持ちのまま学校生活を送る子たちだ。
実際、なかには入学式を欠席する子すらいるという。そういう子はたとえ入試の成績がよくても、学校の課題も積極的にこなせないため、成績は沈んでいく。
「受験の競争を通して、偏差値の高い学校がいい学校と信じこんでしまう子もいます。そうなると、一定の偏差値より下の学校に行くことは屈辱だと思い込んでしまうんです」(塾関係者)
さて、ここでひとつ疑問が生じる。その学校に合う、合わないの判断基準となるのは、入学後の成績だけなのだろうか。つまり、「深海魚」になることは、イコール「学校に合っていない」ということなのだろうか。
どんな環境で伸びるタイプなのか
御三家などの名門中高一貫校では、校内で成績上位なのにもかかわらず、高校進学時に他校を受験し直す生徒がいる。ようは、成績が良くても「自分はこの学校に合っていない」と感じているのだろう。
反対に、成績が悪くても「学校は楽しかった」という例もよく聞く。
ある開成出身の40代男性は、中学に入学して最初の定期テストではクラスで後ろから数番だった。しかし、運動会に積極的に参加したり、部活の練習に没頭したりし、楽しく学生生活を過ごせたという。
塾を取材していると、よくこういう話を聞かされる。「自分よりも学力が高い子たちと過ごした方が伸びる子」と「自分が集団の中で上にいないとダメになる子」がいるということだ。
桜蔭から東大に進み、大手企業で開発職として働く30代の女性はいう。「小学校の頃に私は勉強ができたんです。ただ、父は私が『自分は頭がいい』と勘違いしてはいけないから、もっと勉強ができる子たちが上にいる学校に入れようとして桜蔭を選びました」
結果、彼女は中学に入ってから「自分は特段頭がいいわけではないから、人一倍努力をせねば」と思うようになった。それが原動力となり、勉強をし、希望していた仕事についた。