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再受診するはずが育児の忙しさで…

「麻央さんは2014年に乳がんが発覚したそうです。2014年に受けた人間ドックでしこりが見つかったものの、再検査では異常なしと診断された。半年後に念のため再受診するはずが、育児の忙しさで行くことが出来なかった。その後、違和感があり人間ドッグから8カ月後に再受診した時には、すでに脇のリンパ節へ転移していることが明らかになったとブログで綴っていました。そして、最後に『私も後悔していること、あります。あのとき、もっと自分の身体を大切にすればよかった あのとき、もうひとつ病院に行けばよかった』と書いていました。

『もっと自分の身体を大切にすればよかった』『もうひとつ病院に行けばよかった』という麻央さんの切実な言葉が私にはとても重く響きました。どれほど無念だったろうって。そして、子供を残したまま、先立つような不幸は、病の検診、早期の発見で減らすことができるのではないかと思ったんです」(佐々木さん、以下同)

©文藝春秋/撮影・鈴木七絵

 佐々木さんはそうして、女性を取り巻く、特に命に関わるようながんについて、働く女性が置かれている現状を調べ始めてみることにした。そして、すぐに驚くべきことに気付かされた。

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多くの女性が感じる「配慮のない企業健診制度」へのストレス

 小林麻央さんも患った「乳がん」や、働く子育て世代に多く発症することから「マザーキラーがん(母親を死に至らしめるがん)とも呼ばれる「子宮頸がん」などの検診受診率の低さが予想以上だったのだ。

「例えば、『子宮頸がん』の受診率の場合は、米国で84.5%なのに対し、日本では半分にも満たない42%という低さでした。『乳がん』についても同様に80.8%の米国に対し日本は41%でした」

 命に関わるシリアスな問題にもかかわらず、またメディアなどを通じても度々、受診率の低さが取り上げられているにもかかわらず、この受診率の低さの原因は何か? 佐々木さんは「調査の結果、女性の意識の問題では片付けられない、女性を取り巻く女性特有の環境に原因があることもわかった」という。

受付はピンクとグレージュで明るい雰囲気になっている ©文藝春秋/撮影・鈴木七絵

「その1つが女性特有の『ストレス』です。たとえば、大企業などでも行われている企業健診制度では、男女関係なく検査室の前で待つことになりますよね。私たちの聞き取り調査では大企業に勤める女性の多くが、下着を取った状態で検査室の前で待つことについて、『顔を見知った男性社員たちと同じ空間で待つのは“屈辱的”』と答えました」