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「体だけ貸してくれれば大丈夫だから」と見知らぬ男が…性被害者が裁判で訴えた“切実な本音”

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 芸能界や映画界で性被害を訴える人が増えるなか、ある女性の言葉が大きな反響を呼んでいる。見知らぬ男から突然、性的暴行を受けた卜田素代香さん(うらた・そよか、仮名)だ。犯行直後は証拠隠滅を指示され、「動画を流す」などと脅かされた。しばらくして2000万円もの示談金を提示されたが、彼女は刑事事件として告訴。法廷での15分間の意見陳述が、インターネットや法曹界で予想外の広がりを見せている。

 卜田さんが月刊「文藝春秋」のインタビューに応じた。

※この記事は性暴力被害の描写があります。フラッシュバックなど不安がある方はご留意ください。

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 事件があったのは、日曜日の深夜でした。

 当時住んでいたのは、オートロック付きのマンション。間取りは1Kで、玄関を入ってすぐにキッチンがあり、引き戸を挟んで寝室でした。その夜はキッチン側だけ電気をつけて、寝室のベッドで寝ていました。

 午前2時半頃、キッチンの方から物音がして目が覚めました。人影が見えたような気がしましたが、はっきりしません。怖くなって、開いていた寝室の引き戸を閉めようとしました。でも、反対に開けようとする強い力がかかったのです。

 引き戸が外れて、知らない男が入ってきました(これは逮捕後にわかったことですが30代の男です)。

 恐怖で体が動かず、声も出ない私の口を手で塞ぎました。「静かにして」と言って、「誰か呼んでない?」と私のスマホを差し出させると発信履歴を確認し、遠くに押しやりました。「体だけ貸してくれれば大丈夫だから」と横になるよう指示し、とどめのように言ってきたのが「会社知ってるよ」という一言でした。

 終わった、と思いました。

©iStock.com

 今年2月、東京地方裁判所で開かれた刑事裁判で、私は裁判官や裁判員の方々にこう訴えていました。

「私はこの場では被害者として立っていますが、『被害者』ではなく、意思を持った1人の人間です。『かわいそうな人』ではなく、みなさんと同じように普通に生きてきた、そしてこれからもみなさんと同じように生きていかなければならない1人の人間です。決して稀有な存在ではありません」

 私が被害者となった事件の罪名は、強制性交等致傷。3年ほど前の深夜、1人暮らしの自宅マンションに侵入した見知らぬ男から、性暴力の被害を受けたのです。

 大学を卒業して社会人になった年で、入社前から希望していた部署に配属された矢先の出来事でした。事件後は1日も出勤できないまま、退職することになりました。