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村田沙耶香の“多様性”という言葉に対する想い「“個性”という言葉が怖かったときのことは忘れたくない」

村田沙耶香さんインタビュー#2

2022/06/08

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル, 社会

note

すべての価値がほぼ統一された「均一」に住む男の子の話

 妙に滞在期間が長いなと思っていたら、毎日通って朗読の練習をするんですね(笑)。その間にパレスチナの作家、アダニヤ・シブリさんと仲良くなったりして。アダニヤさんと去年ドイツで再会できたのはとても嬉しかったです。

 

――この作品では「均一」という街に住む少年が「カルチャーショック」という街の老婆に出会います。

村田 企画なさったアダム・サールウェルさんは、ご自身も小説家なのですが、自分が英語話者だからいろいろな言語の本が英語に翻訳されて読めてしまう、また他の言語を第一言語とする人とも当たり前のように英語で会話できてしまう、そのことに違和感があって考えた、とお聞きしました。なんとなくそのアダムさんのお話から想像が広がって、すべての価値がほぼ統一された「均一」に住む男の子の話になりました。

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「アーーーー」という均一語の叫びは、日本語と英語で同じ音の台詞があったら面白いなと思って書いた箇所で、実際、私とパフォーマーの方の朗読が全然違っていて面白かったです。

 他の方の朗読を聞いていたのですが、私は英語も得意ではないので内容をちゃんとわかっていなくて、再会したアダニヤさんは「沙耶香は一番奇妙なものを書いてたよ」と言って笑ってくださいました。

 

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