世界で20兆円超のゲーム市場。そのうち家庭用ゲーム機、PC、スマホの比率は…
世界のゲーム市場規模の調査はいくつかありますが、多少の誤差はあれ、概ね世界全体では20兆円超。うち半分がモバイル(約10兆円)で、残り半分をPC(約5兆円)と家庭用ゲーム機(約5兆円)で分け合う構図になっています。
一般的に、PCはPS4やPS5と親和性があり、ソフトの移植などが比較的容易とされます。そのため、そうしたPS系のゲームをPC向けにも移植していけば、いま収益を上げているPS系のゲームを元手に「10兆円(5兆円+5兆円)」の市場を狙える。これがPC系ゲームに注力していく背景です。
他方で、スマホゲームはPS系のゲームとはそもそも要求されるスペックがまったく違うため、必ずしも移植は容易ではありません。ただ、とはいえ市場全体の半分を占めるかなりの巨大規模があります。
そのため、この分野に注力していくのはビジネスとして自然なことと言えますが、それを差し引いて考えても、ソニーグループは技術や知見をもった人材を確保するために、巨額の投資・買収を続けています。
この動きの背景には、「人気のゲームソフトを特定のゲーム機で囲い込む」という従来の戦略に対する、SIEの懐疑的見方があります。
“囲い込み”戦略の功罪
ゲーム業界の戦略には、いわば“囲い込み”がひとつのパターンとして存在します。「ゲーム機を売る」ことに限ると、人気ゲームソフトが特定のゲーム機の独占で出るほうが当然売れます。古い例を挙げれば初代PS。「ファイナルファンタジー7」を取り込んで爆発的に普及し、ゲーム業界の覇者になりました。
しかし、この構図をソフト側の視点で考えるとどうでしょうか? ソフトにとって「独占」で出すことはメリットばかりではありません。むしろ、「ファンの獲得」という意味ではネックとさえいえます。どのゲーム機、プラットフォームでも遊べた方が、遊んでもらえる機会が増えて、タイトルのブランド力、売上高もアップするからです。
今回のソニーの戦略は、PS5もこれまで通りに売りつつ、モバイルやPCなどのゲーム市場にもアプローチをかけようという狙いがハッキリしています。いいかえれば、ハード側からの戦略にこだわらず、ソフト側から市場をとりに行く戦略が選択されているのです。実際、2025年度(2026年3月期)までにはソニーの自社制作ゲームソフトウェアの売り上げを現在の2倍以上に拡大するとも明言しています。