2025年の“答え”の先にあるもの
むろん、売上高の大小が企業の優劣を決めるわけではありません。しかし完全に無視することもできないのです。
任天堂は、買収による規模拡大は求めず、手堅い経営戦略を取っていますし、そもそも任天堂の営業利益率は3割超。1割程度というビジネスの“常識”から大きく離れた規格外のものです。売上高で劣ろうとも、現時点では営業利益で勝っています。
対するソニーのゲーム事業の営業利益率は1割程度と、任天堂と比較すると物足りません。しかし、売上高3兆6000億円に対して営業利益が1割なら3600億円、2割なら7200億円になります。
今後、PS5が普及し、量産効果によるコストダウンが見込めることを考えると、このまま順調に進めば、ソニーのゲーム事業は今後数年間、右肩上がりの成長をするでしょう。加えて、企業買収などを活用して、スピード重視の展開をしていますが、この投資の結果が数年後になってポジティブな数字として返ってくる可能性があります。
日本市場の肌感覚でいうと、任天堂の方がソニーのゲーム事業を圧倒しています。日本のパッケージゲームの売り上げランキングをみると、「任天堂の圧勝!」と言いたくなる気持ちは分かります。ただ、そこにはパッケージゲームを凌駕しつつあるダウンロードの数字はありません。
加えて、世界における日本のゲームコンテンツ市場は任天堂であれば3割、ソニーであれば1割程度と推測されています。決算の各種数字を見ると、表で見えるランキングとは、まるで違うものが見えてくるわけです。
もちろん、PS5という有望事業がある中での、モバイル、PCへのシフトチェンジには、相応のリスクがあります。後から振り返ると「失敗」となるかもしれません。
しかし、もちろんビジネスに失敗はつきものですが、成功すればさらに売上高、営業利益を大きく拡大出来る可能性があるのです。ソニーが今以上の世界的なコンテンツメーカーになる可能性も秘めているのです。
ソニーの挑戦は、吉か凶か。2025年度に出る“答え”で、ゲーム業界の未来が変わってしまうかもしれないのです。