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この映画を見てほしいブロガーさんがいる

松岡 原作者の方とこんなにお話しする機会はなかなかないので、本を書く経緯をうかがえてすごく新鮮です。読書感想文を書いた思い出もあるし、自分の映画初主演が綿矢さんの作品だなんて、本当に感激しています。私、どちらかといえば女性より男性作家のほうが好きな作品が多いんですが、綿矢さんの小説は大好きです。女性作家では山田詠美さんも大好きです。

綿矢 私も詠美さんの小説が大好きで、彼女に憧れて小説家になったところがあるくらいです。松岡さんとは、読書の系統が似ているみたいですね。

――最後に、この映画を観客にどのように見てもらいたいですか。

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松岡 最初に監督と話していたときに「どんな人に向けてやりたい?」と聞かれたんですが、私の中でまさにヨシカだと思える人がいるんです。といっても全然知らないOLさんなんですけど。その方のブログをいつも読んでいて……。

綿矢 えっ、全然知らない人のブログを読むんですか?

©白澤正/文藝春秋

松岡 私、OLの生活とかキャンパスライフとかをまったく知らないので、演技の参考も兼ねて普段からそういうブログを色々探して読んでいるんです。その中に、この人にこそこの映画を渡したい、と思える方がいて、その一人に向けてつくろう、と考えながら演じていました。

綿矢 それは、すごく幸せな人ですね。本人に伝えないんですか?

松岡 まったく知らない方だから伝えようがないし、私のことを知っているかどうかもわからないですから。

綿矢 いや、それは本人が知ったら感激すると思う。自分のブログを読んで、そのために映画をつくろうと思ってもらえるなんて、宝くじが当たるより低い確率ですよね。

松岡 恋愛や仕事のことを書いているブログなんですけど、本当にこじらせていて、絶対そっちじゃないだろうという選択ばかりしているので、知り合いでもないのに、読みながらいつも「なんでそうなっちゃうの!」と思っていました。ヨシカに対してもそう思うことが多かったので、もうヨシカは彼女だなと直感して。そういう方に映画を見て元気になってもらいたい、というのが一番の気持ちですね。そして口に薬を塗ってもらいたい。

綿矢 私は完全に自分の中だけで書いていて、誰かに向けて、という気持ちで書いたことはないかもしれない。だからいまのお話を聞いてすごく新鮮でした。いやもう、松岡さんのその発想がおもしろすぎて、それで小説を書きたいくらいです。

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わたや・りさ/1984年生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞しデビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞(史上最年少)。12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞受賞。最新刊『意識のリボン』。

まつおか・まゆ/1995年生まれ。映画『桐島、部活やめるってよ』、ドラマ『あまちゃん』などで注目され、映画『ちはやふる』などで複数の新人女優賞を受賞。公開待機作に『blank13』『ちはやふる― 結び―』など。

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聞き手・構成/月永理絵
撮影/白澤正
ヘアメイク(松岡氏)/宮本愛
スタイリスト(松岡氏)/有本祐輔(7回の裏)

勝手にふるえてろ (文春文庫)

綿矢 りさ(著)

文藝春秋
2012年8月3日 発売

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