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「薬剤師時代に過労で顔面神経麻痺になって…」仕事を辞めてライターに転身した30歳女性が3年間も“住所を持たなかった”ワケ

『トカイナカに生きる』より #1

2022/06/17

source : 文春新書

genre : ライフ, ライフスタイル, SDGs, 社会

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薬剤師時代は過労で倒れ、顔面神経麻痺を発症

 松岡がイナフリを受講したのは、大学を出て新卒で薬剤師をやっていた時、過労で体調を崩したことがきっかけだった。正社員で調剤薬局に入ったものの、早朝勤務や夜遅くまでの勉強会が頻発し、自分ではまだ大丈夫と感じていたが知らない間にストレスは溜まっていた。その結果、中等度以上の顔面神経麻痺を発症した。休職を申し出たが認められず、1カ月ほど眼鏡とマスクで顔を隠しながら働いたが症状が改善しないので、やむなく10カ月で退職。沖縄でしばらく休養しているときに、派遣薬剤師の仕事を得た。

 その頃、好きな旅行系のサイトで旅行ライターの記事をみた。

 ─ネット系のライターっていいな。好きなジャンルや得意分野で記事を書いて、ヒット数が増えたらお金にもなるんだな。

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 そう思ってライティングに興味がわいた。たまたまSNSでみつけた「沖縄での派遣薬剤師体験記事」を書く仕事をしたり、薬剤師の知識をもとに自らの「顔面麻痺の体験談」をブログに書いたりしてみた。

 すると検索するたびに自分のサイトが上位にアップされていく。「何で私のブログが上位にくるんだろ?」と興味は深まり、それまでは独学だったが本格的にライティングのことやSEO対策を学びたくなった。あるサイトで「イナフリ」のことを知って、2019年に山梨県都留市の講座で1カ月学んだ。

「その講座修了後は、Webスキルをゲットしたんだから憧れだった海外でのリモートワークをしてみたいと思い、タイのチェンマイに行きました。ゲストハウスに泊まって日本人のノマドワーカー(働く場所を固定せず遊牧民のように働く人)さんたちと一緒にカフェでリモートワークしていました」

 チェンマイにはそんな人たちがたくさんいた。ところが2カ月が過ぎたころ、2020年に入るとコロナの話題でざわつき始めた。そこで帰国して、千葉県いすみ市や富津市のイナフリの卒業生たちがするコ・ワーキングスペースでリモートワークをしていた。

 そこから現在の暮らしに入っていく。そしていまは、個人としてもこんなビジネスモデルを描いている。