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「薬剤師時代に過労で顔面神経麻痺になって…」仕事を辞めてライターに転身した30歳女性が3年間も“住所を持たなかった”ワケ

『トカイナカに生きる』より #1

2022/06/17

source : 文春新書

genre : ライフ, ライフスタイル, SDGs, 社会

note

彼女が掲げる大きな夢

 つまりかつてイナフリを卒業した自分がイナフリの講師や統括として働いたように、自分の後輩たちを育てて働く場所も用意しているわけだ。その結果松岡は現在では、

 ・医療資格とWebライティング技術を掛け算して仕事にする。

 ・講座卒業生たちの「学び」の意欲に応えながら活躍の場を用意する。

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 ・パラレルワークを取り入れながら、自分で自分の人生をデザインする。

 ・働く場所や生活の場所の制約を受けずに、自分で生活をデザインする。

 そんな生活を自分のものにしている。もう仕事のストレスで顔面麻痺になることもない。東京にいないと仕事にならないということもない。自ら仕事を「生み出して」、関わる人に喜んでもらえるような働き方を目指す。

 唯一の心配は、元高校教師の母親に電話する時だ。何度説明しても、「いまどこにいるの? 何をやっているの?」と心配されると苦笑する。「家を持たない」「パラレルワークで働く」「自分でビジネスをつくる」ということが、母親世代には理解しがたいのだ。

 そういうときは医師になった姉に相談する。第三者から説明してもらえば、母親も安心するからだ。夫婦で医師として働き子育て真っ最中の姉は「働き方の選択肢が豊富なのはいいね」と、松岡の生活スタイルを羨んでいた時期もあるという。「派遣とか単発とか若い時からいろいろな働き方のスタイルがあって、病院に縛られないで生活できるから」という理由だそうだ。松岡にとっても姉の存在は、「フリーランスという働き方がメジャーでない時から受け入れて励ましてくれた、心強い存在です」と言う。

 もう1つ、現在の松岡には大きな目標がある。それは「医療版のWebクリエーターチームをつくり、仕事を循環させたい」という夢だ。こう語る。

「私自身はSNS等を通して仕事をもらう機会が増えて、講座もやっているので自分だけでは仕事がまわりきらなくなりました。そういうときに、この仕事を求めている人に仕事を割り振れるようなチームがあったらいいなと思って。高いレベルの医療系の知識をもっている人やデザインの経験値の高い人たちと仕事をマッチングできる場所をつくりたい。幾つかのスキルの掛け算ができる人たちで仕事をこなすチームをイメージしています」

トカイナカに生きる (文春新書)

神山 典士

文藝春秋

2022年6月17日 発売

「薬剤師時代に過労で顔面神経麻痺になって…」仕事を辞めてライターに転身した30歳女性が3年間も“住所を持たなかった”ワケ

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