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犯罪者に対するアレルギーが強い日本

「アメリカなんかとは比較にならないくらい、日本って犯罪が少ないんですよ。とくに重大犯罪は本当に少ない。犯罪者が少ないということは、加害者家族も少ない。だから私は日本全国を駆け回っていてもまだ余裕があるんですよ。なんとなくね」

 事件報道は多いように感じるが、日本は治安が良いからこそ、何か起きればすぐに大騒ぎするのだろう。だからこそ加害者家族はマイノリティになりやすいということでもある。

「アメリカはもう逮捕自体をパッとしちゃうので、別に逮捕されたことで、そんなに周りが引かない。でも日本で『逮捕されました』って言うと、驚くじゃないですか。『無罪推定』の概念はまったく働かない。そしてやはり犯罪が少ないだけに、加害者の周囲の人への差別が強いんですよね。犯罪者に対するアレルギーも強いし、それを生んだ家族に対する連帯責任の意識もものすごく強いの。たぶん、世界的に見て、もっとも加害者家族が生きづらい国ではないかと思っています」

 これがスラム街であったり、ギャング集団が横行する治安の悪い国では、犯罪件数が多い分、加害者家族も多くなり、困ることも少ないのだという。周りが同じ境遇であれば、スティグマにならないからだ。同じ理由で、暴力団の家族からの相談はかなり稀だという。その境遇に慣れているということは大きいだろう。

社会的地位が高ければ高いほど失うものが多い

「だから、私のところに相談に来るのは、本当に普通の生活をしていて、急に、って方がほとんどですよね。たとえば、生活保護家庭の息子が事件を起こしても、その家の生活保護が切られるわけではないんですよ。でも、殺人犯の父親が弁護士だった、となると『弁護士なのに、子どもは何をやっているんだ』となって仕事が続けられなくなる。実際にそれで自殺されているケースもあるんですよね。やはり社会的地位が高ければ高いほど失うものが多いんです」

 損害賠償請求は、ないところからは取れないシステムであるため、貧しい家庭の場合にはそこまで痛手にならないが、経済的に豊かであればあるほど裁判で多額の請求をされることになる。その負担は、本来関係ないはずの子や兄弟にまで影響する。中流家庭が没落し、生活保護へ行きつくこともあるという。たとえば2008年、秋葉原の交差点に2トントラックで突っ込み、通行人をダガーナイフで殺傷し、7人を殺害、10人に重軽傷を負わせた「秋葉原無差別殺傷事件」が起きた。その犯人である加藤智大の家族は、事件後に父は職場を追われて自宅に引きこもり状態となり、両親は離婚。母は精神を患い精神科へ入院、弟は自ら命を絶っている。

 こうしたことは、世間の圧力が強い日本特有のことらしい。たとえばアメリカでは、親は親、子は子という線引きがあるので、息子が殺人事件を起こしても親が会社を辞めることにはならないという。