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「あのメス豚、やっと死にやがった!」給付金欲しさに娘を“薬漬け”にした48歳母親の無残な最期

『トゥルークライム アメリカ殺人鬼ファイル』 #2

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「あのメス豚、やっと死にやがった!」

 2015年6月14日。彼女たちのFacebookに、奇妙なテキストが投稿された。

「あのメス豚、やっと死にやがった!」「あのデブ豚を切り刻んで、可愛くて純潔な娘をレイプしてやったぜ!」

 ディーディーの友人たちは、突然のこの投稿を不審に思い、彼女に電話をかけた。しかし、つながらない。

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 自宅前には、車椅子を収納できるバンが停まったままで、つまりは母娘が在宅中であることを示しているはずだったが、中からは一切応答がない。

 通報を受けた警察官が、家宅捜索を行なったところ、発見されたのが寝室で突っ伏すディーディーの刺殺体だった。

 しかし、娘ジプシーの姿がどこにも見当たらない。室内には、病気の治療に使う酸素マスクや、栄養を体に送るためのチューブ、そして車椅子が残されたままだった。

 警察は殺人事件として捜査を本格化させ、同時に行方不明のジプシーに関する情報提供を呼びかけた。

 手がかりのひとつは、Facebookの不審な投稿だ。警察はIPアドレスから投稿者を割り出し、それがニコラスという男性の住居から書き込まれたものであることを特定した。もしも、このニコラスという人物がジプシーを連れ去ったのだとしたら、車椅子もない状態のまま、監禁されている可能性が高い。何より、栄養を送るためのチューブもない状況であれば、生命に関わることも予想される。事態は一刻を争った。

 ところが――。ニコラス家に突入した捜査員の視界に飛び込んできたのは、軟禁状態の衰弱したジプシーではなく、金色のウィッグを被り、自らの足でしっかりと歩くジプシーの姿だった。

 あるいは、それがジプシー本人であると確信するのには、一定の時間を要したかもしれない。そのくらい、彼女の姿は警官たちのイメージと異なるものだった。

ジプシーの身を襲う数々の“病”

 事件の被害者であるディーディー・ブランチャードは1967年生まれで、事件当時、48歳だった。

 家族や親族の証言によれば、幼い頃から彼女は、自分に都合の悪いことを誤魔化したり、小細工してやり過ごそうとする一面があったという。そして、何か気に入らないことがあると、その「報復」として、相手のモノを盗む手癖の悪さがあったことも明らかになっている。

 そんなディーディーが24歳の頃、当時まだ高校生だった17歳の少年、ロッド・ブランチャードとの交際が始まり、その数ケ月後に妊娠が発覚する。この時に身ごもったのが、ジプシーである。