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学生時代からロシアを撮り続けたけど、「まさか」と

岡村 宮嶋さんは、ロシアについては昔から関心があったそうで。

宮嶋 学生時代から行ってました。最初は、大学に入ってすぐの頃。当時はまだソ連。アメリカの雑誌『LIFE』に、反戦メッセージを書いたプラカードを掲げた老婆が、はがい締めにされて連れていかれる写真があったんです。それ見て、「あ、この国を撮りたい」と思って行き始めたのが最初です。

 

岡村 ゴルバチョフの前?

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宮嶋 ブレジネフの時代です。そのときは、結構、開けっぴろげだったんですよ。要は、北朝鮮や中国と違って、同じ共産主義でも、売春婦がいる、物乞いの人がいる、暴走族がいる、闇ドル買いの兄ちゃんもいる。「あ、これって全然知られてないじゃん」と。で、2年目からは本格的に撮りはじめて。

岡村 いまのロシアは、さもありなんですか? まさかですか?

宮嶋 もちろん、「まさか」のほうが強いです。ただ、やっぱり、年配の人は圧倒的にプーチンファンが多い。いま、もし選挙をやったなら、有力な対抗馬がいないというのもありますが、やっぱりみんな投票しちゃうと思うんです。ただ、サイレント・マジョリティはいっぱいいる。特に若い連中は。でも、黙っていますよね。

岡村 しかし、いまのロシアって、彼らの言い分があるにせよ、到底正当化できるものではなく。子どもがいようが、学校だろうが、病院だろうが爆弾を落とす。どこでどんな目に遭ってもおかしくない、そういった恐怖感はないですか?

 

宮嶋 私の場合、鈍感で楽観的で、あまり怖いと思うことはないんです。でも、さすがに今回は。ウクライナでは、防弾チョッキに「PRESS」という名札をつけるんですが、一緒についていくウクライナ軍の人は「名札を外してくれ」と。むしろ、それが目立って標的にされる。向こうはそういったことをまったく関係なく撃ってくるので無駄だと。

 今まで経験した戦地は、バグダッドにしてもコソボにしても、やって来るのはNATO軍や米軍。侵略軍を迎える現場は今回が初めてなんです。米軍が来るなら取材もできるし、その後は米軍についていくこともできるけど、ロシア軍が来たら外に出られないどころか、捕まるんじゃないか、捕まったらどうなるのか。何をされるかわからない。