ソウルに暮らす三人の姉妹。花屋を営む長女ヒスクは夫と別れた後、反抗期の娘と二人暮らし。熱心なキリスト教徒の次女ミヨンは、大学教授の夫と共に幼い兄妹を育てている。夫とその連れ子と暮らす三女ミオクは劇作家だが、今はスランプ状態。個性豊かな三人の日常が描かれるうち、徐々に彼女たちの内側に巣食う闇が見えてくる。 

 韓国では近年、『はちどり』をはじめ社会における女性の生き方や苦しみに光をあてた「女性映画」の名作が次々に生まれている。イ・スンウォン監督の『三姉妹』(公開中)もそのひとつ。

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 物語の中心となる次女役を演じ本作の製作も手がけたのは、『オアシス』(イ・チャンドン監督、2002年)で知られる名優ムン・ソリ。長女役は監督のパートナーであり『愛の不時着』などドラマ・映画で活躍するキム・ソニョン。新鋭チャン・ユンジュが型破りな三女役を演じる。

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 劇作家・演出家としても活躍し、これが長編映画3作目となるイ・スンウォン監督に、この映画がどのようにして生まれたのか、お話をうかがった。

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韓国の過去と現在を生きる女性たちに興味があった

――これは三人の女性たちが主役になる映画ですね。女性の生き方をめぐる物語を、男性である監督が作られたのは少し意外に思いました。

 自分が男だからか、男性の生き方を知りたいとはあまり思わないんです。それよりも、女性の行動原理や感情、そして彼女たちが男性とどのような関係を築いていくのかにずっと関心がありました。何より、韓国の過去と現在を生きる女性たちに興味があった。今大人として生きる女性が過去どんな生き方をしてきたのかを描きたかったんです。

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――この映画は、ミヨン役のムン・ソリさんとイ・スンウォン監督との出会いから企画が始まったそうですが、具体的にはどのように製作が進んでいったのでしょうか。

 私が初長編映画『コミュニケーションと嘘』(15)を釜山国際映画祭に出品した時、審査員を務めたムン・ソリさんと知り合ったのが始まりでした。韓国を代表する女優である彼女を迎えられるならどんな映画が作れるだろうと、物語を考えていきました。脚本を書き上げるとムン・ソリさんはぜひこの作品に参加したいと言ってくれた。そうして何度も会って話をするうち、主演だけでなく製作まで手がけてくれることになりました。