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「弟がいるのだから、この映画は『三姉妹』ではない」という声も…男性映画監督があえて“弟”の存在を切り離したわけ

『三姉妹』イ・スンウォン監督インタビュー

2022/06/24

genre : エンタメ, 映画

note

男性優越主義がはびこっていた時代

――先ほど監督は、「韓国の過去と現在を生きる女性たちに興味があった」とおっしゃいましたが、現在と過去を描くことにこだわった理由を教えてください。

 韓国では男性優越主義がはびこっていた時代が過去にあり、子供や女性はずっと冷遇されていました。そんな野蛮な時代を子供として過ごした女性たちはどんなトラウマや傷を抱えて大人になり、現在どんな姿で生きているのか。今も過去に囚われ苦しみ続けているかもしれない。でも必死で過去の状況を改善しようとしているのではないか。そういう女性たちについて、改めて考えてみたかった。そのためには、過去と現在、二つの時間を描くことが必要だったんです。そこには、二度と悲惨な時代がくりかえされないように、という私自身の願いもこめられています。

©2020 Studio Up. All rights reserved.

――ラストシーンがまた素晴らしいですね。彼女たちが最後、晴々とした笑顔を浮かべていることに救われた気持ちになりました。

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 最後、三人の姿が消えたあと、子供たちが出てくるのが見えると思います。実はあれは、ヒスク、ミヨン、ミオクの子供時代を演じた子役たちなんです。海辺での撮影のあと、子供たちが普段着に着替えた姿を見て、この子たちをもう一度この映画に登場させたいと思いつき、即席で撮らせてもらいました。

 三人が急に幸せになるとは思えないし、すべての状況が良くなるとも言えない。それでも何か希望は持てるんじゃないか。少なくとも、こうして三人が集まり再び心が通じたのだから。そういう思いであのラストシーンを作りました。過去に戻るのではなく、未来を見据えていく話にしたかったんです。

――映画は子供時代のミオンとミオクが走っていく後ろ姿から始まり、同じ子供たちが未来に向けて走っていく姿で終わるわけですね。

 そうですね。この子たちは必ず幸せになるんだという希望をこめたかったんです。

©2020 Studio Up. All rights reserved.

Lee Seung-Won/1977年生まれ。初長編『コミュニケーションと嘘』(15)が釜山国際映画祭を始め多くの映画祭で話題を集める。『三姉妹』は長編三作目。演出家・劇作家としても活躍する。

INFORMATION

『三姉妹』
公開表記:6月17日(金)より全国順次ロードショー
配給:ザジフィルムズ

「弟がいるのだから、この映画は『三姉妹』ではない」という声も…男性映画監督があえて“弟”の存在を切り離したわけ

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