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 己の学力の足りなさが要因でもあるが、俺はまともな大学を出て、まともな会社に勤めるコースからは外れた。その劣等感に苛まれる一方で、そんなもの抱いていないと思い込もうともして三十数年。俺のような者はゴロゴロいるだろう。

 だからこそ、コースアウトしていたマーヴェリックに感情移入してしまう。向こうは元エリート・パイロットだし、格納庫暮らしもなんだか自由気ままでFIRE(Financial Independence, Retire Early)っぽい。でも、「あのマーヴェリックも、それなりにいろいろあったんだな」としみじみしてしまうわけだ。

ライバル「アイスマン」の大変化

 また、意外にも深く刺し込んできたのが、前作でマーヴェリックのライバルだったトム・“アイスマン”・カザンスキー。アイスマンの渾名の由来でもある冷静さを活かしてコースに乗り、海軍大将にまで上り詰めたのだろうが、喉頭がんを患っている。演じているヴァル・キルマーも、2015年に喉頭がんを発症して気管切開をして声を失っている。演者とキャラクターの現在が重なっているのだ。

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 もうすぐ俺も50歳。身内、友人、知人と、周りを見渡せば、病身の者や病気で亡くなった者は少なくない。かくいう俺も、健康診断の検査項目が一気に増え、脂肪肝やら食道裂孔ヘルニアやらの疑いを指摘されている身。したがって、ここでも「あのアイスマンも大変だったんだな」としみじみさせられる。

 とはいえ、36年の時間経過を突きつけるばかりではない。中年まっただなかの我々にも、「まだまだイケるから」とエールをも送ってくれる。若いパイロットたちを指導するだけだったはずのマーヴェリックが、彼らと一緒に作戦に加わってF/A-18の操縦桿を握ってしまうのは、その真骨頂といっていい。

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 鑑賞前は年長者から年少者への継承がテーマにもなっているのだろうと思っていたが、マーヴェリックは譲る気などまったくないに等しい。「君たちがバーッと出てってもいいけど、俺もガーッと出てくから」というスタンス。

 彼の性格を考えれば当然だし、そうしたほうが作劇的に盛り上がるし、なにしろ主演作のほとんどが“トム・クルーズのトム・クルーズによるトム・クルーズのための映画”のトム・クルーズだからしかたがない。