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「休みたいというのは罪を犯すようで…」BTS”グループ活動休止宣言“の波紋と韓国で語られる“K-POPの暗部”

2022/06/19
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K-POP産業の“暗部”

 韓国のK-POPのアイドル育成システムは、世界的にも大きく成功した「ビジネスモデル」と評価されている。

 企画事務所はオーディションを通じて練習生を募集し、数年間の集中訓練をさせた後に、再び社内オーディションを通じてデビュー組を作る。デビュー組は普通、ラップラインとボーカルラインに分けて4人~10人ほどで構成し、すべてのメンバーは一定水準以上のダンスも踊れなければならない。

 デビュー組が作られれば、デビューのために再び数年間のトレーニングに突入する。ボーカル、ダンスはもちろん、整形手術も訓練プログラムに含まれる。世界市場進出のために英語、日本語、中国語などの語学勉強も必須になり、最近では過酷な競争からくるストレスを克服するためのメンタルケアや人格教育まで加わっていく。

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 このような育成過程に企画事務所は途方もない費用を注ぎ込む。しかし、デビューに成功したからといって、すぐに人気を得ることはない。韓国では毎年50~60組程度のアイドルがあふれ出るため、この競争で勝つためには再び巨額のプロモーション費用がかかるのだ。

 一方、アイドルの契約期間は平均7年で、所属事務所は契約期間中に投資費用を回収し、収益を最大限に上げなければいけない。その結果、アイドルはこうした数年間に及ぶ重点的なトレーニング期間を抜けても、活躍する中でさらに苛酷なスケジュールを消化しなければならなくなっている。

 超絶頂人気のBTSも例外ではなかった。2021年、ある放送に出演したJINは、「365日のうち360日をメンバーたちとくっついている」と話したことがある。完璧なチームワークを誇る言葉だったが、「休む暇もなくスケジュールをこなしている」という意味で受けとり、心を痛めたファンも少なくなかった。

 デビューから9年間、文字通り休まず走りつづけ、世界のトップに躍り出たBTS。そんな彼らが「ぼくが休みたいと言ったら、皆さんに嫌われるのではないかと思い、罪を犯しているようで……」と涙ぐんだ姿は、現地でも、韓国が誇るK-POP産業の“暗部”を直視するきっかけとして受け止められている。

「休みたいというのは罪を犯すようで…」BTS”グループ活動休止宣言“の波紋と韓国で語られる“K-POPの暗部”

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