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 同院には医学的知識を有する救急救命士が勤務し、救急車からの電話を受けたり、他の病院への転院搬送の交渉など煩雑な作業を担っている。

 救急救命士が転院搬送調整のために受話器をとった。私も隣で電話に聞き入った。

「わたくし、湘南鎌倉総合病院の救急調整室の永澤由紀子と申します。転院をご相談したい患者がいまして……はい、はい……」次第に永澤(24歳)の表情が曇っていく。「わかりました。ありがとうございます」と受話器を置く。

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電話を受ける永澤由紀子さん(著者提供)

 1件目に連絡した病院は、「夜間の受け入れは厳しい」ということで受け入れを拒否した。

 2件目――「ベッドが空いておりません」

 3件目――「当直医の私では判断できかねます」

 4件目――「当院ではADLが自立した方(1人で身のまわりのことができる人)のみを受け入れています」

 そして5件目の病院からは、「その患者さんは(痰の)吸引が必要でしょうか?」と尋ねられた。

 永澤が「必要」と答えると、「でしたら受け入れができません」との返事。

 次々に断られて9件目。これまでのように永澤が一通りの説明を終えると、受け入れてもらえそうな雰囲気が漂っていた。しかし、「抗原検査で陰性を確認したとのことですが、PCR検査で陰性を確認しなければ当院では受け入れられません」

 との答え。PCR検査は数時間を要する。しかも夜中に行うことは難しい。

 永澤は「わかりました。お忙しい中ありがとうございました」と受話器を置いた。山上はため息をつき、肩を落とす。

 以上、9件はすべて「検査結果でコロナが陰性化した患者の入院管理を行う」と、神奈川県に報告している医療機関である。この中には残念なことに徳洲会系列の医療機関も含まれていた。

――そして10件目。

「本当ですか? 受け入れてくださるんですか?」