昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「救急とコロナ、どちらも断らない」を実現するために…湘南鎌倉総合病院がコロナ禍の初期段階で見せた“貫くための行動力”

『徳洲会 コロナと闘った800日』より#1

2022/06/25

 湘南鎌倉総合病院は、日本で最大規模の病院・医療事業グループである「徳洲会」に属し、“断らない救急”を掲げて近年日本で最も救急車の搬送を受け入れている病院である。

 ここでは、全国の徳洲会病院がいかに新型コロナウイルスと対峙し、闘ってきたかを描いた、ジャーナリスト・笹井恵里子さんの著書『徳洲会 コロナと闘った800日』より一部を抜粋。湘南鎌倉総合病院が、いち早くコロナ禍に対応しようとした奮闘の記録を追う。(全2回の1回目/後編に続く

◆◆◆

救急とコロナ、どちらも断らない

 湘南鎌倉総合病院は2020年2月14日にダイヤモンド・プリンセス号に乗船していたコロナ患者を受け入れ、同月25日に一般外来を受診した患者がコロナに感染して救急搬送、のちに死亡した。いつ、どこに患者が発生してもおかしくないという2月末、山上浩(編注:同院の救命救急センター長)は院長室に呼ばれた。

向かって左が山上浩医師(著者提供)

 ちょうど山上が同僚や部下に対して「100%の救急患者受け入れ」を強いることに迷いが出ていた時期である。

 院長室には、のちにコロナ臨時病棟責任者となる同院集中治療部部長の小山洋史(43歳)、看護部長などのメンバーが集合していた。

「はっきりさせておこう」

 院長の篠崎伸明が口火を切った。

「救急とコロナ、どちらも断らない。これからもその方針でいきます」

 山上の心の霧が晴れた瞬間だった。

「言い方は悪いですが、正直うれしかったです。すべての責任を取る院長が『これからも断らずにやる』という方向性を示してくれ、悩んでいたことが吹っ切れました。同時に、やっていくんだという覚悟ができました」(山上浩)

 篠崎は3月2日、全職員に向けても朝礼で「従来通り、救急を断りません。貫きます」と明言した。

 具体的な方針は、「地域医療を守る」「職員の安全確保」「先手を打つ」「コロナを正面視する」の4つだ。先手を打つためには、正面を向き、コロナと闘う姿勢を見せていかないといけない、とも説明した。

 徳洲会グループ全体の理念として「断らない救急」を掲げながらも、その方針をどこまでも貫く病院は数少ない。同院の「24時間365日絶対に断らない。100%患者を受け入れる」ことへの迷いのなさは、トップに立つ篠崎の心そのものだ。

湘南鎌倉総合病院の院長・篠崎伸明さん(著者提供)

「コロナも、救急も断る理由はいくらでもあるんです。でも1件断る理由を見つけると同じことが繰り返されて、職員があっという間にその環境に慣れ、そのうち口だけは『断らない』と言いながら『専門医がいませんが、それでもよかったら』という婉曲(えんきょく)な断り方をする。

 だから大事なことは、救急を断らないこと、コロナを正面からみること。そこがぶれなければ、その次には、それを実行するための感染防止対策を考えることになるでしょう。そうでなく一番最初に感染防止をあげてしまえば、“逃げ回る組織”になってしまいます」(篠崎伸明)

z