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「それなら一人でする!」創刊38年、1万5000部発行の激アツ雑誌『月刊朝礼』編集部は“朝礼”をやっているのか

「それなら一人でする!」創刊38年、1万5000部発行の激アツ雑誌『月刊朝礼』編集部は“朝礼”をやっているのか

『月刊朝礼』編集部に行ってみた #1

2022/07/09
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新社長、一人朝礼を始める

下井 そうなんです。それで、「あの~、朝礼、しないんですか?」って社員に聞いてみたんですよ。そしたら、「昔はあったけど、みんな忙しいし、朝から人数が揃わないことも多いから、いつの間にかなくなった」のだと。

 それを聞いて、「違うやろ!」って(笑)。いいと思うものを作っているのに、自分たちで使ってみないと、その良さも分からへん。それで、「朝礼、いる人だけでもやりましょう!」と呼びかけたら、「ひとり、ふたりじゃできませんから」と、そっけない返事で。それで数日間、編集スタッフと言い合いになったんです。でも、誰一人、一緒にやろうと賛同してくれる人は出て来なくて。

――編集者は出社時間がバラバラなことが多いですし、毎日朝礼をする編集部というのも私は聞いたことがないですが、それにしてもさみしいですね……。結局、その時は諦めたのですか?

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下井 いえ。「もう、それなら一人でする!」と決めて、一人朝礼を始めました。

――一人朝礼? 一人で朝礼ができるのですか……? それはどんなものだったんでしょうか。

下井 まず、「おはようございます! 朝礼を始めます!」と、一人で立ち上がって挨拶します。それから『月刊朝礼』を手に、“今日の話”を読んで感想を述べ、神棚に向かって社是を(一人なので)独唱します。それで最後に「今日も一日、よろしくお願いしまーす!」と社員に声をかけておしまいなんですけど、社員一同、フル無視!(笑) みんな下を向いて仕事しているだけです。

©杉山秀樹/文藝春秋

1か月後に立ち上がってくれたのは……

――なかなかカオスな展開ですね(笑)。私なら心がすぐに折れそうですが、どのくらい一人で続けたのですか?

下井 1か月間くらい、ずっと一人でやっていたかな。でも、ある日、50代の経理の女性が立ち上がってくれたんです。彼女は祖父の代からの社員さんで、私がまだ子供だった頃から知っていた方でした。当時は小さい会社だったので、家族の帰宅が遅い時は、幼かった私の面倒を見てくれたこともある方で。

 でも、後から聞いたら、「もう毎日、痛々しすぎて見ていられんかった」って(笑)。そのうち、新しいスタッフも入ってきて、一人、二人と参加してくれるようになりました。

――朝礼が復活して、何か変化はありましたか? 

下井 不思議なもので、朝礼を始めてから、殺伐としていた社内の雰囲気が変わっていきました。朝礼で毎朝、顔を会わせ、それぞれの言葉を聞くことで、その人が何を考えているのか分かるようになったり、社員同士が気軽にコミュニケーションできるようになったんです。

 今では社長になって16年目ですが、私もまだまだなんです。「こうしたほうがいいですよ」と、従業員たちに助けてもらったり教わったりすることも多いです。そうやって部署の垣根や上下関係を越えて気軽に物を言い合えるのも、朝礼のおかげかもしれません。