企業の朝礼で取り上げる小話を集めた『月刊朝礼』をご存知だろうか。コミニケ出版が発刊している、1984年から続く専門誌である。
前編では板前から転身した現社長に、創刊の経緯や朝礼への想いをお聞きしたが、後編では、『月刊朝礼』編集部による活気あふれる朝礼に潜入した。(全2回の2回目/前編から続く)
※記事中の部署名や役職は取材当時のものです
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おそらく世界で唯一の朝礼の専門誌といえる『月刊朝礼』。取り寄せてページをめくると、最初のページに『月刊朝礼』を使った朝礼の流れが書かれていた。企業の朝礼を取材した記事などが掲載されている雑誌ではなく、毎日の朝礼で使うテキストのようなものらしい。
マナーやモラル、季節の話や歴史上の人物の逸話など、1日1話、365日分の「ちょっといい話」が掲載されており、小中学校で使った道徳の教科書が思い出される。ほかにも経営者へのインタビューや「朝礼川柳」などのコーナーのほか、「今日の気づき」を書き入れる余白も用意されている。
しかし、昔と違って業務連絡ならメールで済ませられるし、フレックス制の導入やリモート勤務によって、朝、社員が揃わず、朝礼自体がないという企業も増えているだろう。ラジオ体操や社員旅行などと共に、いずれ消えていく企業文化のひとつではないのか――。
今の時代、あえて朝礼を行う意義とは何だろう? そして、『月刊朝礼』を出版している編集部では、どのような朝礼が行われているのか。その疑問を胸に、我々は出版元のコミニケ出版がある大阪へと向かった。
朝9時半、『月刊朝礼』の朝礼が始まった
朝9時過ぎ、大阪市内を流れる大川のほとりに建つコミニケ出版のビルを訪れた。『月刊朝礼』の編集長である梶谷友美さんによると、普段は編集部内で朝礼が行われるのだが、手狭なので今日は取材のために広い会議室を用意してくださったという。
10人ほどが座れる会議室に入ると、壁に掲げられた「いまやらねばいつできる わしがやらねばだれがやる」という書が目に入った。ホワイトボードに目をうつすと、そちらには「正々堂々」との社是が書かれた額と、モノクロの男性の写真が立てかけられている。聞けば、写真の男性は創業者の下井勲氏だという。
一方、ホワイトボードに磁石で張り付けられていたのは神棚の写真であった。別室の編集部に祀っている神棚が移動できないので、今回の取材に合わせて雰囲気だけでもと貼ってくださったのだ。
9時半になると、『月刊朝礼』編集部員を含む社内の従業員さんたちが会議室に集まってきた。今日の参加者は社長も含めて8人。朝礼を始める前に、編集長が何やら白い箱を持ってきた。司会を決める箱だという。