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「今日もわが社は…ツイてる!」日本の中小企業を支える老舗雑誌『月刊朝礼』編集部の“スゴい朝礼”に潜入してみた

「今日もわが社は…ツイてる!」日本の中小企業を支える老舗雑誌『月刊朝礼』編集部の“スゴい朝礼”に潜入してみた

『月刊朝礼』編集部に行ってみた #2

2022/07/09
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 緑のストローをひとりずつ、くじ引きのように引いていく。「よかったら文春さんも朝礼に参加しませんか」と急に言われて、我々もハラハラしながら司会くじを引いてみたが、結局、この日、当たりを引いたのは編集長であった。

 なぜ司会が当番制ではなく、くじ引きなのかというと、ゲーム性をもたせることで、楽しさを演出しているのだという。また司会になった人は、最後に最近のニュースについて紹介し、コメントしなければならない。そのため、前もって司会当番が決まっていると、その日しかニュースを見ないかもしれない。いつ当たるか分からない方が、日々ニュースをチェックする習慣が身に付くそうだ。

くじ引きで今日の司会を決める。この日は梶谷編集長(左端)が当たりを引いた ©杉山秀樹/文藝春秋

「おはようございます!」「失礼いたします!」

 くじ引きを終えると、いよいよ朝礼がスタートした。「〇月〇日の朝礼を始めます。おはようございます!」との挨拶に続き、司会が指示したのは「神棚に拝礼!」。全員が一斉に、神社で参拝しているのと同じ「二拝二拍手一拝」の作法を行う。

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 神棚の写真は会場の雰囲気づくりではなく、実際に拝むために必要だったのかと理解できたものの、社員全員が腰を90度に折り、深々と頭を下げたので、我々もあわてて続いた。朝一番に神棚に拝礼するのは、日本の伝統と文化を重んじ、感謝の気持ちを持つためだそうだ。

 さらに「会社の礎を築いて下さった感謝の気持ちを込め」、創業者の写真に向かって一礼。そして、コロナ禍のため実際に触れあうことはできないが、働く仲間とも心の距離を縮めコミュニケーションを図るため、左右の人と握手の動作をする「エア握手」と流れるように続く。

まずは神棚に拝礼 ©杉山秀樹/文藝春秋
普段は、編集部にあるこちらの神棚に拝礼しているという ©杉山秀樹/文藝春秋

 神様や創業者、働く仲間を讃える朝礼のはじまりが実に新鮮に映った。続いて「ていねいなあいさつ用語」の唱和が始まった。

「おはようございます!」「失礼いたします!」などよく社内で使う言葉を大きな声で唱和した後、「接客五大用語」である「ありがとうございます!」「お待たせいたしました!」と続く。こうした唱和はサービス業では開店前によく行われているが、挨拶を自然に発するトレーニングになると、コミニケ出版でも取り入れているのだそうだ。

『月刊朝礼』はどう使っている?

 ここまでは朝礼の準備体操のようなものだろうか。いよいよここから『月刊朝礼』の登場だ。冊子を手に社員さんたちが円の中心を向いて輪になった。この日の小話はドイツの作曲家であるベートーベンの偉業についてである。

 スピーチにしてちょうど1分程度の小話を司会が読んでいく。晩年、「第九」などの名曲を書いたベートーベンはほとんど耳が聞こえなかったが、それに挫けることなく精力的に作曲をこなし、「一行も書かざる日なし」との言葉を残したという。