下井社長セレクト「先輩の背中」(2020年10月20日の記事)
ある雨の朝のことです。通勤途中のNさんは、前方にかがみ込む人の姿を見つけました。何をしているのだろうと見ていると、道に落ちているごみを拾い集めているようです。
雨に濡れるのも構わず一心にごみを拾っている姿を、道行く人がけげんそうに見ています。Nさんも、「奇特な人もいるものだな」と思って近づいてみると、何とそれは同じ会社の先輩、Dさんだったのです。
驚いて声を掛けるとDさんは笑って挨拶し、こう言いました。
「駅から会社までの道のごみ拾いを日課にしているんだ。きれいになると気持ちがいいだろう。雨の日でもやっぱり気になってね」
Nさんは感動し、Dさんを手伝って残りのごみを拾いました。
それから数日後、Nさんは駅の自転車置き場で、何台もの自転車が倒れているのを目にします。一瞬迷ったものの、雨の日に見たDさんの姿を思い出し、起こして並べ直しました。
いつもなら人目を意識して勇気が出ないのですが、その日はそれ以上に、「世の中の役に立つことがしたい」と強く思ったのです。
今日の言葉:一人の善行が誰かの意識を変えます
梶谷編集長セレクト「ちょっとがすごい」(2020年9月17日の記事)
Eさんには、行きつけのおすし屋さんがあります。カウンター席でゆっくり時間を過ごすのを、週末の楽しみにしていました。従業員はみんな礼儀正しく、居心地のいいお店です。
ある日、隣に座る男性客が、Eさんに続いて握りずしを注文しました。
数分後、同じタイミングで、すしが2人の前に置かれたとき、Eさんはあることに気づきます。
Eさんのすしは右手で取りやすいように置かれているのに、男性の分は左手で取りやすい向きになっていたのです。食べ始めた男性を見ると、確かに左利きでした。何も言われなくても、お客さまに合わせて盛り付ける繊細さに感心しました。
会計時、店長に挨拶してからそのことを褒めると、店長はこう言いました。
「ありがとうございます。あの板前は、若いけれど気遣いができるんです。ちょっとのことなんですが」
「そのちょっとの差がすごいと思うんです。気づかない人が多いからこそ、際立ちますね。ごちそうさまでした」
今日の言葉:上質なサービスは観察力と想像力から