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「今日もわが社は…ツイてる!」日本の中小企業を支える老舗雑誌『月刊朝礼』編集部の“スゴい朝礼”に潜入してみた

「今日もわが社は…ツイてる!」日本の中小企業を支える老舗雑誌『月刊朝礼』編集部の“スゴい朝礼”に潜入してみた

『月刊朝礼』編集部に行ってみた #2

2022/07/09
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 読み終えると、司会がストップウオッチを片手に「感想をお願いします」と、ランダムに指名していく。最初に指名されたのは、編集部の大河内さんだ。

「耳が聞こえていないのに、作曲するということは味が分からないのに料理をするようなもの。人間の限りない可能性を感じます。(中略)苦難の中でも負けずに前にすすむ精神は見習いたい」と、起承転結を付けてスラスラと見事に話し終えた。そのとたん、全員が「ありがとうございます!」と唱和。

 さらに司会が「1分10秒です」と計測した時間を告げる。これは各自、決められた時間で意見をまとめるプレゼンテーション能力を向上させるためだという。

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司会に指名された人から順に、「今日の話」を読んで感じたことを1分で話していく ©杉山秀樹/文藝春秋
その間、司会はストップウオッチで時間を計測する ©杉山秀樹/文藝春秋

 続いてWEB事業部の津村さんは「情熱を持ち続けることの大変さ」を、編集部でデザインを担当している櫛橋さんは、「耳の聞こえないバイク乗りの人との出会いと気づき」の経験談を、下井社長は「一日も休まず続けられる天才と凡才の違い」についてそれぞれ語った。

 全員がリラックスして1分前後でスピーチをするので、毎日、朝礼前に話すことをメモしているのかと聞いてみると、そんなことはなく、ほとんどの人が即興で話しているのだという。最初は声も小さく、内容がうまく伝わらなくても、毎日、続けているうちに、その場で考えてまとめる力や話す姿勢が自然とつくそうだ。

社是や経営理念を唱和

 テキストを机に置くと、再び、前方の神棚に向き直り、唱和が始まった。コミニケ出版の社是と経営理念、果たすべき責務の大要の3つである。

「コミニケ出版 社是」
「正々堂々 大道を大手を振って歩こう……」

「コミニケ出版 経営理念」
「事業誠を悉くし救済を念となす 一人ひとりの幸福の実現 企業という組織体の発展と永続 社会の平和の実現」

「コミニケ出版社員としての果たすべき責務の大要(クレド)」
「第一には、親祖先からいただいた命を大切にし、あらゆる知識と経験をいかして、自分の可能性を伸ばしていきます……」

コミニケ出版の経営理念 ©杉山秀樹/文藝春秋

 最後の責務の大要は第六まであるのだが、全員が暗記しているようだ。近江商人が残した「三方よし」を連想させるような、売り手や買い手だけでなく、社会貢献をして世の中も良くしていこうといった内容が続く。

「今日もわが社は……」

 唱和を終えると、いよいよ朝礼も大詰めを迎えた。それぞれ本日の業務内容を発表した後で、司会が「最近のニュース」を発表。この日は、司会の編集長が最近の学校で始まった防災授業について紹介し、普段からの防災準備や被災時のコミュニケーションの大切さなどの私見を述べた。