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「相手を撃ち殺せば無期懲役だが、車を使えば量刑はさほど重くない」 最終局面を迎える7年目の山口組対立抗争 事件続発の裏にある“高齢化問題”

2022/06/23

genre : ニュース, 社会

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 同時に、神戸山口組から2017年4月に分裂して結成された「任侠団体山口組」(現・絆会)がターゲットとなった事件も続発。三重県伊賀市で5月10日、絆会組員が銃撃されて重傷を負ったほか、6月6日には神戸市長田区の絆会代表・織田絆誠の自宅に車が突入した。すべての事件は6代目山口組系の組織に所属する組員らによって引き起こされた。

なぜ建物への車両突入事件が頻発しているのか?

 こういった対立抗争では、これまで相手を銃撃して殺害するなどで8人の死者が出ている。さらに、事務所への銃撃、火炎瓶の投げ込み、車両突入、繁華街での乱闘騒ぎなどの事件は約90件。対立抗争が原因ではない組織内での移籍をめぐるトラブルなども合わせると、100件以上の事件が起き、死者は十数人に上るとみられている。

 最近になり抗争事件が続発していることについて、警察当局の幹部は、「なぜ事件が続くのかは不明だ」と前置きしつつ、次のような見解を示した。

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「これまでも同じ傾向だったが、6代目(山口組)側が起こす事件ばかりとなっている。6代目有利という形勢がかなりはっきりしてきたなかで、さらに圧力をかけて決着というか、神戸(山口組)側にトップの引退、組織の解散などを迫るメッセージなのだろう」

6代目山口組の高山清司若頭(中央) ©時事通信社

 また、近年は建物への車両突入事件が頻発していることについてはこう指摘する。

「拳銃で相手を撃って殺害すれば無期懲役の判決が多くなっており、厳罰化の傾向となっている。殺人未遂罪でも十数年の懲役が相場。事務所への発砲でも銃刀法違反罪の発射、加重所持などに問われ、それなりの懲役が待っている。一方で、車を使うと問われる罪は建造物損壊罪で量刑はさほど重くない。その割にはインパクトが大きいから車が使われるということだろう」

相次ぐ分裂による「勢力縮小」

 事件続発は「6代目山口組側のいら立ちの表れではないか」と発言していた前出の指定暴力団幹部は、「対立抗争はすでに決着がついているようなもの。あとは(神戸山口組の)トップの決断次第。本人は『一人になっても最後までやる』などと発言しているようだが、まったく現実的ではない」と指摘する。

 この幹部が指摘する通り、分裂による対立抗争の形勢は6代目山口組側が優勢な状況が続いている。警察庁が全国の暴力団構成員について取りまとめた最新データとなる2021年末時点で、6代目山口組は約4000人で、神戸山口組は約510人となっている。構成員数では8倍の差が開いてしまっているのが現実だ。

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