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 ところが、伊勢志摩サミット開催が迫ると不思議なことが起きた。抗争事件がピタリと止まったのだ。6代目山口組系の幹部は、「サミットでもオリンピックでも、国際的な行事が開催される際には事件を起こして警察に恥をかかせるようなことはしない。あの時期は『静かにしていろ。動くな』との指示があった」と述べる。

 そのうえで、「当面は法令順守だった」と似つかわしくない言葉で振り返った。

 しかし、伊勢志摩サミット終了後に「大きな音」が岡山市で鳴り響いた。

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神戸山口組側を脱退する組織が相次ぐように

 2016年5月、同市内に拠点を構える神戸山口組池田組の若頭・高木昇が射殺された。逮捕されたのは6代目山口組弘道会系の組員だった。池田組をめぐっては2020年5月にも高木の後任の若頭の前谷祐一郎が銃撃されて重傷を負い、6代目山口組系の組員が逮捕された。

 2019年10月、神戸市の山健組本部事務所近くで、同組系の組員2人が同時に射殺される凶悪事件が発生。6代目山口組弘道会系幹部が逮捕された。

 同年11月にはさらに凶悪な事件が発生。兵庫県尼崎市で神戸山口組幹部、古川恵一が自動小銃で数十発の銃弾を浴びて殺害されたのだ。逮捕されたのは6代目山口組竹中組の元組員だった。現場は商店街で多くの買い物客が行きかう夕方の時間帯で巻き添えの危険があった。

関係者に流出した写真には、尼崎の古川射殺事件現場に残された自動小銃とみられる凶器が写っていた

 

 古川殺害事件は犯行形態の残忍さから、「抗争の潮目を変えるほどの事件だった」(警察庁幹部)とされ、この事件以降、神戸山口組側を脱退する組織が相次ぐようになり、6代目山口組側は抗争を優勢に進めるようになっていく。

事件が続発したのは、高山に向けてのアピールのため

 警察当局の幹部は、「6代目山口組が攻勢を強めて行ったのは、何よりカリスマ性のある高山の出所の影響が大きい」と指摘する。

6代目山口組の高山清司若頭 ©時事通信社

 若頭の高山は2010年10月、京都府警に恐喝容疑で逮捕され、その後、懲役6年の実刑判決が確定。2014年6月から服役していたが、2019年10月に府中刑務所を出所したのだった。凶悪事件は出所を前後して発生していた。

 この当時に事件が続発した背景について、警察当局の幹部は、「高山の出所の前後に各傘下組織が次々と事件を起こしたのは、高山に向けてのアピールのためだろう。そもそも分裂したのは、高山が服役中で不在のため、山健組などが決起したのだと考えられる」と分析。

「何もかも高山だ」と強調している。(文中敬称略、一部の肩書は当時)

山口組分裂の真相 (文春e-book)

尾島 正洋

文藝春秋

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その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。