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 ここで女王は王室が“人寄せパンダ”になることの大切さと、王室の活動をどんどん発信しないと国民にはわかってもらえず支持も得られないことに気づき、現在のような積極的な広報体制に舵を切ったのです。

 ダイアナ事件と同時期にイギリス王室は公式ホームページを開設。その後も、SNSやYouTubeでも積極的に王室の暮らしや仕事を公開し、王族の人々の専門分野や役割をアピールし、年間の収支決算や報告書も公開してきました。そうして20年近い時間をかけて、イギリス国民からの王室支持率を劇的に向上させたのです。

ハリー王子とメーガン夫人 ©iStock.com

 国民からの高い支持率が現れたのが、2020年1月に始まったハリー王子とメーガン夫人の「王室離脱事件」でした。2人は、メーガン夫人がアフリカ系アメリカ人であることについて差別的扱いを受けたなどと主張して王室とトラブルになり、Instagramで一方的に主要王族からの引退を発表しました。それに対してエリザベス女王は彼らの称号や公務を剥奪したのですが、実に国民の9割が女王を支持すると答えています。

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 ハリー王子との結婚が2度めだったことなどを理由に、メーガン夫人に対しては中高年を中心に反発がありました。しかし若者からは元女優でありパワフルな性格として支持されており、もしダイアナ事件で反省せず閉じた広報を続けていたら、世間がハリー王子とメーガン夫人側についていた可能性も十分にありました。

©iStock.com

 しかし積極的な情報公開の結果として、90歳を超えたエリザベス女王が国のために尽くしてきたことをイギリス国民は知っていました。それを引き継ぐべきハリー王子が「逃げ出した」と、皆が女王を支持したのです。

日本の皇室のあまりに貧弱な広報体制

 一方、日本の皇室はどうでしょうか。皇位継承問題など課題は山積みで、小室圭さんと眞子さんの結婚では皇室へのバッシングが起こりました。特に若年層の皇室への関心低下は統計でも明らかです。

天皇皇后両陛下(平成元年、当時)即位後初の記者会見(宮内庁提供)

 この苦しい状況には、やはり広報活動の不足が大きく関わっていると思います。皇族がどんなことをしているのか知らなければ、なぜ皇族が必要なのかわからず、関心もなくなる。若年層ほどその状況は深刻です。

 そんな皇室の広報体制を象徴する出来事があります。2017年4月にスペインのフェリペ6世国王とレティシア王妃が国賓として来日した際のこと。歓迎式典や宮中晩餐会の様子を、スペイン王室はその日の晩のうちにYouTubeにアップしました。

 しかし、日本の皇室にはもちろんYouTubeアカウントはなく、晩餐会から1カ月後に宮内庁のホームページに写真が載っただけでした。