基本的に挿入の有り無しはメーカー側が決めること
神野 新法の議論で話題にもなったのでお伝えすると、現場では擬似の性行為は結構ありました。実際には挿入せずに、モザイクや角度を工夫して実際に挿入しているかのように撮影しているんです。ただ、挿入がないとはいえ、それまでの前戯はやりますし、なんなら最初の挿入シーンは実際に挿入して撮影するんですよね。
その違いだけなんですが、擬似か本番かで、ギャラは数万円変わります。なので、基本的に挿入の有り無しはメーカー側が決めることが多いですが、挿入している方が良い絵をとれるということもあって本番が絶対という現場もあります。
その一方で製作費を少しでも安く抑えたい場合などは擬似となる場合もあります。AVの撮影は体力的にも大変なので、その日のコンディションに応じて、挿入のありなしがもっと自由に選べるようになったら良いのかなと思います。どこまでリアルを追求するか、AVはあくまでもAVでしかないので、コンテンツを制作する側も考えなければいけない事なのかなと思います。
――たしかにAVでの性行為を現実と勘違いし、そのまま鵜呑みにしてしまう危険性も言われていますよね。
神野 最初の頃は割といろんなコンテンツに出演していたんですけど、最後の半年は「レイプ」系は拒否していました。演技だとわかっていても怖くて痛くて。実際にやられた方の気持ちは想像もできないです。これを続けていても誰のためにもならないと思って、そういう企画にはNGを出していました。
そういうことをコンテンツとしてファンタジーに落とし込むのってどうなんだろうって。誰も幸せじゃないなって思いますね。
「AVはいいよ! おすすめだよ」って絶対に勧められない
――これからAV女優としてデビューしたいと思っている人に何か伝えたいことはありますか。
神野 AV女優ってキラキラしていたり、すごく楽しそうな毎日を送っていると思われがちなんですけど、SNSで見せているのは一部分でしかないので。他の仕事同様、辛い時もありますし、悩むこともあります。
売れる人はごく一部です。作品を世の中に出しているので、デジタルタトゥーも残ります。お金もすごくもらえるわけではないです。
だから、私は「AVはいいよ! おすすめだよ」って絶対に勧められないです。もちろん私自身、AV女優をやっていたことは後悔していないし、AV自体が悪いとは思っていないですが、よく考えて欲しいです。入ってみたら、思っていたことと違うってことはあるので、そういう時に、自分だけで抱え込まずに、周りに相談できる環境があるといいと思います。
あとはやめた後どうしたいかってことを始める前に考えておくべきだと思います。自分がいくらAVに誇りを持っていても、AVをよく思わない人はたくさんいますし、将来の選択肢が狭まるのも事実だと思うので。その部分を楽観的に考えるのは危険だと思いますね。
AVに依存しすぎないというのも大事だなと実感しました。一般的な仕事よりはお金がもらえますし、ある程度時間の融通も効くので、若い時からその世界に入ってしまうとそこから抜け出せなくなるんですよね。だからこそ、AVをやりつつも仕事から一定の距離を取っておくことも重要だと思いますね。
――神野さんは現在は会社員として働いているとのことですが、引退前から引退後の仕事については考えていたのでしょうか。